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Simulation War of Micro  作者: 卦位


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第13話 田楽狭間③

 ひたすら鎧武者を撃ち倒しながら細い小道を進む。鎧武者はひっきりなしに道の横の藪から湧いてくる。なんか多いぞ。でも構わない。ライフルで片っ端から撃ち抜く。アルファがメガ粒子砲を連射する。ベータとデルタは前衛をすり抜けマザーに接近してくる武者を狙い撃つ。イプシロンは武者の塊に突っ込んでは引きちぎり吹き飛ばす。

 いい感じだ。上がってきた、気分がいい!


 小道が終わり開けた場所に出た。前方の小高い丘に何かいる。

「マスター、強力なエネルギー反応を前方の丘に確認」

「ユニットの種別はなんだ」

「ただいま、識別中…え、UNKNOWN」

「UNKNOWN?何だそれ」

「分かりません。このようなユニットに遭遇するのは初めてです!」

「ホントに異例づくしのフィールドだな。虎穴に入らずんば虎子を得ず、みんな行くぞ!」

「あ、お待ちください、マスター!」

 愛李の制止を無視して俺は丘の上に真っ直ぐ進む。慌ててマザーのエンジンが唸りを上げた。ユニット達は俺の周りを警戒しながら飛んでいる。

 モニターの真ん中に何かを捉え

「拡大」

 と声を出した。

 別ウィンドウが開き拡大された画像を見た俺は目を細める。

「公家…か?」

 担がれた輿に公家が座っている。雅な服を着ているのだろうが、俺にはあの美的感覚は分からない。

「前衛、突っ込むぞ」

「マスター、敵の能力が不明の中、力押しは危険です」

「だから言ったろ、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ!!」


 またもや目の前に鎧武者が現れた。だがサイコブレードを一閃すれば武者は消えていく。

 いい加減飽きてきた時、ちょっと強そうなやつが俺の前に立ち塞がった。おーっ中ボス戦開始だなー。

 こいつは槍を持ち低く構えて鋭い突きを放ってくる。サイコブレードを抜き槍を払う。やっぱりリーチが足りない。戦国時代の戦では槍が標準装備だったらしい。刀を振るうのは最後の最後だそうだ。でもな、俺が振るうのはサイコブレード、ただの刀じゃない。

 突かれた槍を払い返す刀で俺も突きを返す。普通に考えて刀が当たるはずがない。しかし突くと同時にブレードは伸びていく。初見殺し成功。武者の左肩にブレードはめり込んだ。そのまま左下に切り下ろす。袈裟斬りが決まる。武者は崩れ落ちた。

 こんなもんか。もういい。スカッと終わらせるか!


「アルファ、イプシロン、ストームアタックだ。他は愛李指揮のもと雑魚殲滅」

「了解!」


 イプシロンを先頭に俺、アルファが直線上に並ぶ。イプシロンがバーニヤを燃やして推力を上げる。公家に向かって突っ込んでいく。

 進行方向にまた鎧武者が立ちはだかるがお構いなくイプシロンは突入し武者の壁を粉砕、公家に肉薄する。

 そして俺とアルファがイプシロンの影から同時に飛び上がりメガ粒子砲とライフル連弾をお見舞いした。


 しかし


 公家はびくともしない。ライフルのエネルギー弾は扇子で弾かれ、粒子砲をかわす素振りも見せなかった。


 公家の口元に戻っていた桜の花が描かれた扇子がゆっくりと閉じていく。


「尾張の田舎侍め。この麿が戦の作法を教えてしんぜよう」


 輿を担いていた足軽たちがひざまずく。ゆったりと公家が地面に降り立った。


 雅な着物が破れ、中から胴白の鎧が現れる。烏帽子は金色の五枚兜。

 輿が消え、公家の手に巨大な太刀が出現する。


 公家の体が、ゆっくりと大きくなる。


 イータよりも、さらに大きく。


 1.5倍の巨体。


 俺は、息を呑んだ。


 ――何だ、これ。


「儂は、従四位下今川治部大輔義元じゅしいげいまがわじぶたいふよしもと。海道一の弓取りと呼ばれる大大名じゃ!」


 モニターのUNKNOWNの表示が『今川義元』に変わった。同時に強烈なプレッシャーが俺達を襲った。何かに押しつぶされるような感覚を覚える。


「マスター!全ユニットに異常発生!」


 愛李の声が、緊迫する。


「何が起きてる!?」


 モニターに、警告が次々と表示される。


 アルファ:出力低下20%

 ベータ:照準精度低下25%

 デルタ:機動力低下15%

 イプシロン:装甲強度低下10%

 ガンマ:システムエラー多発


「ガンマ!」


 俺は、ガンマを見た。

 ガンマが――

 空中で、ふらつく。


「マスター……申し訳……ありませ……」


 ガンマの声が、途切れ途切れになる。

 そして――

 ガンマが、落ちる。

 マザーの上に、ドサリと落ちた。


「ガンマ!」


 ガンマは、マザーの上でへたり込んでいる。

 体が、小刻みに震えている。


「ガンマ、応答しろ!」


「マスター……すみ……ません……」


 ガンマの声が、弱々しい。


「頭が……情報が……多すぎて……」


 ガンマが、頭を抱える。


「処理……できま……せん……」


 愛李「ガンマがオーバーフローを起こしています!

 索敵・電子戦ユニットのため、

 敵の威圧を情報として処理しようとして

 許容量を超えました!」


「何だと!?」


 義元が、笑う。


「フフフ……」


 低く、重い笑い声。


「儂の法の下では、貴様らに自由はない」


 義元が、太刀を掲げる。金色の光が、義元の周囲に広がる。

 まるで、結界のように。


「これが、法治支配じゃ」


 義元の金色の瞳が、俺を見据える。


「貴様らの力は、儂の前では無力」


「くそっ……」


 ――名乗っただけで、これか。


 全ユニットが、弱体化している。

 ガンマは、戦闘不能。


「マスター、危険です!このままでは――」


 俺はサイコブレードを強く握りしめた。


 ここで逃げたら…何も変わらない。今は逃げるタイミングじゃない。ココは逃げてもいい場所じゃない。せめて、立ち続けなければいけない場所だ。


 俺の中の奥に眠っていた何かが起きあがる。


「全機戦闘態勢を維持。愛李、撤退はなしだ。分かったな」


「了解しました。マスター!ガンマ以外の全機立ち上がれ。マスターの盾と剣となれ!」


「いっくぞー」


 俺は義元に斬り掛かった。一合、二合と斬り結び隙を見てバックステップ、左手でライフルを抜き義元に撃ち込む…瞬間やつの脚が蹴り上がりライフルは空に飛んだ。上段から太刀が落ちてくる。


 ゴウッ


 音がした。更に後ろに飛び逃げたのでバランスを崩し尻もちをついてしまう。


「情けないのう」


 更に一歩踏み込んできた義元の太刀が下から袈裟に切り上がってくる。


 ビシューン


 ベータの放った長距離狙撃弾が義元の耳をかすめた。太刀は振り抜かれなかった。


「くっ多勢に無勢か。ちと分が悪いの。ならば、儂も援軍を頼むとしよう」


 義元は太刀を掲げ声を発した。


「武田、北条よ、盟約に従い我に助成せよ」


 空に穴が開く。その穴から出てくる者は、武田の赤備えと北条の地黄八幡だった。


「武田の騎馬隊、味わってみよ」


「勝ったー。勝ったぞ。勝ったぞー!」


 騎馬は速度を上げながら曲線を描き、アルファ、ベータ、デルタを翻弄する。一撃離脱戦法に太刀打ちできない。足軽は密集陣形を引き俺に突撃してくる。勝ったぞと叫ぶ声が癇に障る。

 イプシロンが俺の盾になるが足軽共に押されている。


「者共、どくがよい」


 一斉に騎馬と足軽が散らばる。正面に義元。太刀を左に構えている。


「海道一の弓取りが一太刀、受けてみよ!」


 横一閃、振り抜かれた太刀から眩い光と稲妻が放たれた。面じゃない、立体制圧空間兵器。俺達全ユニットは光と稲妻の奔流に飲まれた。


 モニターに、警告が次々と表示される。


 アルファ:出力低下50%

 ベータ:照準精度低下65%

 デルタ:機動力低下40%

 イプシロン:装甲強度低下30%

 ガンマ:システムエラー多発。起動不能

 マザー:エンジン出力45%低下

 イータ:出力低下50%

 全ユニット平均損傷率39%


「ハッハッハ。よきかな。尾張のうつけよ、ここまでのようじゃの」


 ゆっくり義元が俺に近づいてくる。強者の雰囲気を纏い、俺にトドメを刺しにくる。

 立つんだ。立てなければ死ぬ??!


 ヒュイーン


「ぬ、弓か」


 義元は太刀を振るい自分に飛んできた弓を払ったが弓は爆発した。


「ぬを、焙烙矢だと。小癪な」


「えーい、離れなさーい!」


 見覚えのあるユニットが、聞き覚えのある声と共に、直進してきて義元に体当たりした。


「ぬぬ、女、今巴か」


「ホーキングさーん、大丈夫ですか〜」


「遅れてすみません。思った以上に索敵に手間取ってしまいました。」


 俺の顔に笑顔が戻る。


「李苑さん、ブラックさん!」


「三者同盟復っ活あーつ!」


 万松寺の三英傑「猿殺し」「一直」「生還王」が揃った。

 よし、これならいける!


 太刀を下に向けて佇む義元の顔に焦りはなかった。


「うむ、後詰めか。戦を少しは知っておるようだの。しかし、甘いの」


 サワサワとかぜが吹き舞い上がった草木が落ちた時。そこに居た。一体のユニット。


「殿、お遊びが過ぎますぞ。勝てる戦を確実に勝ちきること。乱世の鉄則でございます」


「相変わらず手厳しいの、師傅よ」


「では、始めましょう。戦を」


 そいつは黒い服を来ていた。僧衣というのか。坊主だった。今川の黒い坊主…まさか


 黒衣の宰相、太原雪斎が現れた。























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