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プロローグ ―ここが俺のリアルだ―
「イータ。サイコブレード。斬れ」
俺の声に応えて、9mmのロボットが剣を振るう。
敵機が両断され、光の粒になって散っていく。
――心地いい。
この感覚が、たまらなく好きだ。
空を飛ぶ爽快感。
敵を倒す達成感。
そして――
「マスター、敵残存数、あと3機です」
愛李の声が、落ち着いて響く。
この声を聞くと、安心する。
「了解。一気に片付ける」
イータが加速する。
俺――朝永は、48歳のサラリーマンだ。
現実世界では、誰からも必要とされない、ただの中年。
営業成績は低迷し、
妻は冷たく、
息子たちは金しか求めない。
でも――
「マスター、全敵機撃破です」
愛李が報告する。
――この世界では違う。
ここでは、俺は「マスター」だ。
愛李が、俺を必要としてくれる。
ここが、俺の居場所だ。
ここが――俺のリアルだ。
「よし、次の戦場に向かうぞ」
イータが再び飛び立つ。
俺は、この世界で戦い続けている。
自分の居場所を、守るために。
――全ては、あの「箱」が届いた日から始まった。
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