003潜入
〜マスカレード学園〜
「あなた方が探偵の皆さんですか。」
やや太めの中年の女性が、一種の騒音公害に近いくらいの勢いで喋っている。
「誰ですか、この人は?」
「うちの理事長です。普段から話が長いんですが、今日はいつも以上に長いですから、頑張って耐えてください。」
「それにしても、本当に長いですね。」
ちなみに、話が始まって既に20分以上経過している。
「カズキさん、この話もう3回以上は聞きましたよ。」
「私ももう限界だよ。なんとかならねぇか?」
「俺もう無理。」
3人が弱音を吐き始めると、タカヤマが察したらしく、
「理事長、そろそろ。」
「あら、もうそんな時間?あんまり喋ってないと思ったのだけど。」
「いやいや、20分でも十分だろ。」
「それでは、職員室に案内します。」
5人は理事長室から出た。
「ったく、ババアってのはなんではなしが長ぇんだ?」
「知らないね、そんな愚問。考えるだけ無駄だよ。」
「すみませんね、うちの理事長が。」
「本当に疲れましたね。ムダ話にあそこまでの攻撃力があるとは思ってもいませんでした。」
「あ、もし捜査が長引いたら、あんな話を週一ペースで聞かなきゃいけないんですよね。」
「そんなこと言ったら、ここの生徒はその苦行を毎週うけてんだぜ。」
「……地獄ですね。」
露骨に嫌そうな顔をするカズキであった。 そんな雑談をしていると、
「ここです。」
5人は職員室に着いた。中に入ると、アスカ、リュウ、サクラの3人はそれぞれ自分の学年主任のところへ行き、そして編入するクラスの担任はここにいないということで職員室を後にした。
(大丈夫ですかね?あの3人。まぁ、信じるしかありませんけど。)
「キリヤ先生、この方が数学主任の『サカモト先生です。』」
「はじめまして、サカモトです。」
「キリヤと言います。しばらくの間よろしくお願いします。」 紹介されたサカモトという男は、数学教師というより体育教師といった感じの男である。
(思いっきり苦手なタイプですね………。どうしましょう……。)
―つづく―