000依頼前
アスカは相当暇だったらしく、前触れもなくZEROに向かっていた。
「大学の講義も休みだし、友達は彼氏と旅行だもんなぁ。あの2人ならどっか連れて行ってくれそうだし。」
ガチャ!!
「……どちら様ですか?」
アスカが扉を開けて中を見ると、長い黒髪の女性が立っていた。
(この人一体誰?髪は綺麗だし、それにスタイルなんかもモデル並。世の女性のすべてを敵にまわしそう。)
等とアスカが考えていると、
「アスカ、あなた何しに来たの?」
女はまるでアスカを知っているようである。
「どちら様ですか?あれ、アスカさん。どうしたんですか?」
部屋からカズキが顔を出した。
「あの、こ、この人、だ、誰ですか?」
「そういえばアスカさんはご存知ありませんでしたね。この人は『サクラ』ですよ。」 「…………え?すみません、まったく理解できないんですけど。」
「だから、私が黒猫の『サクラ』だ。」
「アハハハハ。そんな非現実的なこと、あり得るわけないじゃないですか。」
「これを見てもか?」
そう言うと、女の身体が淡く光ると、一匹の黒猫『サクラ』の姿になっていった。
「これで信じてくれますか?」
「ハイ……。」
アスカは力無く返事をした。
―――――――
―――――
―――
「あんな綺麗な人がサクラちゃんだなんて、まだ信じられません。」
アスカがサクラ(猫モード)を膝に乗せながら話をしている。
「まあ、初めから信じられる人なんて、そんなにいませんからね。」
「信じたら信じたで逆に、そいつの頭の中が怖えーよ。どれだけファンタジーなんだってことになるから。」
「でも、何でサクラちゃんは変身できるんですか?」
「それはですね……」
「それは、私が『猫又』だからだ。」
アスカの上に座っていたサクラがいつの間にか人モードになって話しだした。
「うわぁ!」
「いきなり変身すんな!」
「驚かさないでください。」
「それは悪かった。」
サクラ(人モード)は悪気がまったく無いかのように笑った。
「あの、『猫又』って何ですか?」
アスカは申し訳なさそうに聞いた。
「簡単に言えば、何十年も生きている猫のことだね。」
「そうなんですか。失礼じゃなかったら、何年生きてるか教えてもらってもいいですか?」
「女に年齢を聞くのは女同士でもタブーだ。」
「大方、笑えないほどの年齢なんだろ。例えば千……グファア!」
サクラ(人モード)が年齢を言いそうになったリュウをストレートで殴り飛ばし、飛ばされたリュウは壁に激突し、心なしか壁に少し埋まってるように見える。
リュウ、ご愁傷様。
こんな風にギャーギャー騒いでいると、
ピンポーン♪♪
依頼人がチャイムを鳴らした。