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ⅰ.
むちゃ短い。
最終章の始まりです。
嬉しいとは、どのようなものなのでありましょう。
幸福とは、それはかけがえのないものなのでしょうか。
私の彷徨う夜は何処までも広く、深く、重く、暗く、私しかいない。
呼吸さえできないほど、苦しくて寂しいもの。
――――それが当たり前だと、ずっとずっと思っていました。
それは偶然の出逢いでした。
本来ならば起こるはずのなかった出逢い。
もしも、私が川に落ちなければ。
もしも、貴方が気紛れで私を拾わなかったなら。
もしも。もしも。
廻り逢うことのできなかったときのことなど、虚しくて想像すらできない。
嬉しいとは、私の中から湧き起こってくる温かな感情。
幸福とは、それはそれはかけがえのない大切なもの。
どれほどささやかで、小さくて、ちょっとしたことで消えてしまいそうなものでも、確かにあるもの。
貴方と声を交わせる。貴方と同じ時を過ごすことができる。ほんのちょっとのささやかなできごとが嬉しくて、幸福で、愛おしくて、愛おしくて…………ささやか過ぎて、貴方は苦笑ってしまうかもしれないけれど。
そして、それを教えてくれた貴方が何よりも――――




