表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月に捧ぐ恋の調べ  作者: 白猫ねねこ
Ⅰ.始まりを告げる出逢い
2/65

ⅰ.

最初の方は、かなーり妙な話になってます。


*04/14 会話文前後に改行入れてみました。


 ――――すこし、昔語りを致しましょう。



 昔々のこと。

 世界は人間と魔族との諍いにより、森は枯れ、大地は弱り、風は澱んだ。

 争いは止まることがなく、やがて誰もが闇の深みに嵌っていって。


 争いが渦巻く世界。

 そこに、神が舞い降りた。


 争う人間と魔族をご覧になって嘆かれた神。


 神が枯れた大地にその足を付けると、草木は潤い再び、芽を出し。


 神が舞い踊ると、風は清々しく吹き抜け。


 またその口で紡がれる調べは、争いで荒んだ者たちの心を癒し、

 堕ちて行くだけであった彼らを闇から救い上げた。


 そうして、争うばかりだった者たちは、

 嘆きながらも争うだけの己たちに希望を見出そうとする神の姿を見て刃を引いた。


 神が、自分たちを愛して歌っていることを知ったから。


 神の愛に、応えたいと思ったから。


 やがて神は1人の人間に恋をし、結ばれる。

 人間との間に3人の娘に恵まれた神は愛する人間の生涯を見届けると、

 (そら)へを還っていった。




 とても古く、永遠に紡がれていく物語は、それで終わりはしない。



 * * * * *



 広大な領土と温暖な気候に恵まれた国――――アウルレクス。

 東西で人間領と魔王領に分かれた、神の舞い降りた地であるアネディティト大陸の中央付近にある豊かな国だ。

 神の二の姫が初代の王妃とも言われるこの国は、二の姫が剣と熱情を司ると謳われた姫であったためか、実力主義国家だ。特に王族はその傾向が強く、能力で王を選んでいた。また男女問わず能力に優れたものは引き立てられ、出世できる可能性が高い。そのため他国から人が多く集まり、国も受け入れる体制を取っているので自然と商人も集まり、物流の中心地となっていた。



 そんな神の加護を受けるアウルレクスの王都の一角。とある喫茶店のオープンテラスのこと。


「結婚しよう」


 穏やかな春の日の昼下がりの、街中。そう言ったのは見目麗しい青年だった。

 肩に届かない長さの、日の光をそのまま紡いだかのような癖のない黄金の髪に、眩いばかりの翠の双眸。何処か少年めいた人懐っこさのある風貌だが、その長身は鍛えられ、引き締められていることが服の上からもわかるほどだ。平民の服を纏っていても、彼の何気ない品のある仕草や優雅な雰囲気は、彼が上流階級の出であることを伝えてくる。

 そんな彼の求婚を受けたのは、これまた美しい少女だった。

 緩やかに波打つ腰に届く長さの髪は、艶やかに煌く闇色。長い睫毛に縁取られた澄んだ瞳も深い闇色。対し、処女雪のような白く透き通る肌は瑞々しく、傷一つない。現実味のない触れたら壊れてしまいそうな人形を思わせる愛らしい美貌の中、唇だけが薔薇色に色づいて潤んでいる。

 少女はなんと返事をするのか。求婚した青年だけでなく、街の人々は息を殺して少女の返答を窺う。

 真っ直ぐに見つめてくる漆黒の双眸。夜闇に沈む静かな水面を連想させる瞳は何処までも澄み渡り、偽りや真実といった全てを光の下に曝け出すかのよう。

 青年もまた真っ直ぐにその瞳を見返し、ごくりと息を呑む。少女は艶やかに微笑んだ。


「――――お断りします」


 はっきりきっぱり少女の薔薇色の唇から放たれた言葉に、青年はがっくしと肩を落とす。


「今日こそはと思ったのに……!」

「しっかりなさってください陛下!」


 周りの者の励ましに、陛下と呼ばれた青年は「ありがとう」と力なく返す。

 彼はここ、アウルレクスの国王エレクシヤだ。先王の急逝によりたった16歳という若さで即位し、既に3年が経とうとしている。先を見据えることに長けた彼は民を想っての善政を布き、その上剣の腕にも優れているとあって、人望に厚く民にも慕われている。

 そんな彼がただいま絶賛求婚中なのは、王都の北西にある森に住む目の前の少女だ。

 普段薬師として森の中で暮らしている彼女の名を、シンシアといった。時折街に自身が作った薬を売りに来たり、必要な日用品を買いに来たりしている。薬について豊富な知識を持つシンシアの作る薬はよく効くと王都では評判で、『魔女』と謳われるほどだ。回復魔法にも長けている魔術師でもあるため、治療師として雇いたいと望む声も多い。


「いい加減に私を諦められては如何です? 貴族のお嬢様でも他国の姫君でも娶られなさいませ」


 アウルレクスは広く豊かな領土と強い兵力を持つ豊かな国だ。もう19になるというのに妃のひとりもいないエレクシヤに、自国の貴族や他国の王族はアウルレクス王族と結び付きを強めようと、しきりに娘を勧めてくる。

 どんな美女も選り取り見取りの立場であるエレクシヤなのに未だに妃を娶る気配がないので、躍起になっているのだ。

 シンシアはカップを手に取ると、温くなってしまった紅茶に口を付ける。


「私などを娶って何の利があると言うのです。ただの薬師に現を抜かす前に、国のためにも早く身を固められてください」

「でも、俺まだ19だし……」

「まあ、今は平和ですけどね。けれども、これから何が起こるのかは誰にもわかりませんし……」


 ちらっとシンシアは少し離れたところの土産屋を覘く茶髪の青年を見やる。彼はシンシアの視線に気付くと、苦笑した。


「あまり護衛もなく街を出歩かないでくださいね」

「それはやだ」


 街に出て民の暮らしを直に見たいという想いから、仰々しい護衛を巻いていることを知っているシンシアだが、これだけは譲れない。


「今は平和に見えますが、それは永遠に続くものであるとは誰しも言うことはできません」


 今やお伽噺と同等に語られる神が鎮めたという争い程ではないが、人間と魔族は仲があまりよくはない。現に、魔族の住まう国ルノーシェと隣り合うアウルレクスでは、国境近くでたまに小競り合いも起こっていた。


「ルノーシェはあまり他国と関わりたがらないからな……俺も魔王に会ったことないし」


 人とは違う強過ぎる力。儚き命には永遠にも映る永い寿命。そして、違う者であるが故の考え。

 ごく稀に人間と魔族の恋が歌われるが、大抵は周りに理解されることなく、悲恋として憐れみを誘う。


「人と魔族は、相容れることができないんだろうか」


 独り言のような王の呟き。永い時の中で、どれ程の平穏を求むる者がそれを望んだであろうか。

 少女の漆黒の双眸に、穏やかな光が宿る。


「それは、人と、そして魔族次第です。人が魔族を、魔族が人を、理解できなくとも受け入れることができたのならば、諍うことはありませんよ」


 それは簡単なようでいて、決して簡単なことではない。

 複雑な顔をするエレクシヤに、シンシアは苦笑する。


「今すぐにはとは言いません。けれども、どうか、否定することだけはしないでください」


 仄かに温かい少女の言葉は、穏やかに王の心に染み入る。


「……わかった」

「おわかり頂けたのなら、今すぐ城に戻られなさいませ。貴方はこの国の要、何か起こってからでは遅いのです」

「…………」


 エレクシヤは渋々と立ち上がると、テーブルに料金を置いた。茶髪の青年が近寄ってくる。


「じゃあな、シア。また来週」

「めげませんね……」


 こちらの様子を窺っていた茶髪の護衛を引き連れて城へと戻っていく王の後姿を見送り、シンシアも店を出た。




王様ってどのような人だ……?

とりあえず、少年みたいな人にしてみました。

そして主人公、そんな王様の想いを切って捨てます。

権力とかあんまり好きじゃないので。その上他人に淡白だし。

でも王様めげません! がんばれ王様! 主人公の相手役じゃないけど!


主人公の相手役はまだです。


投稿したというのに、話の都合上ちょこちょこ手を入れています。

ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ