はだかの王妃様
ある日、お城の王様のもとに仕立て屋がやってきました。
「王様、今日はとても不思議な布地をご用意しました。なんとこれは愚か者には見えない布なのです。明君と名高い王様にはもちろんこの布地の素晴らしさがお分かりいただけるかと存じます」
「ほう。それは確かに珍しいものだな。しかし、わしにはその布は見えないようだ。わしは民の評判ほどには賢明ではなかったようだな。どうだ王妃よ、そなたにはその布が見えるか?」
王様が隣の王妃様に目配せしながら尋ねると、王妃様はすました顔で答えました。
「ええ、王様。わたくしにはとても素敵な布が見えておりますわ」
「そうか。王妃がそう言うのであればそうなのだろう。では仕立て屋よ、その布で一着わしに仕立ててもらえるか」
後日、仕立て屋が例の布で仕立てた王様の衣装を持ってやってきました。
「王様、先日ご注文いただいた衣装を持ってまいりました。いかがでしょうか」
「ほう、そうか。やはりわしにはなにも見えぬがな。ところで仕立て屋よ。先日お前が帰った後に別の仕立て屋がやって来てな。その者はお前とは逆に愚か者にしか見えない布を持ってきたのだ」
王様は隣の王妃様のほうに目をやりながら続けて言いました。
「実は今、王妃が着ている衣装はその布で作らせたものなのだ。もちろんわしにはしっかり見えておるが、愚か者ではないお前はどうだ? 王妃がどのような衣装を着ているかわかるか?」
正直に見えると言えば自分の嘘もばれてしまうと思った仕立て屋は、仕方なくこう答えました。
「……王妃様は裸でいらっしゃいます」
仕立て屋の言葉を聞いた王様ははげしく怒って言いました。
「王妃の裸を盗み見るとは、なんと不埒な奴め! 衛兵、その不届き者を牢に入れておけ!」




