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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
6章 ラブラブ期突入

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98.恋人1日目

朝――


私は早めに目を覚ました。

けれど、思い出してしまう。昨夜の出来事を。



(……ああああ……思い出すだけで顔が熱いっ……!)



あれは夢じゃない。本当に、ライグルさんに抱きしめられて……額や頬に、何度も、何度もキスをされた。

彼の体温も、声も、全部ちゃんと覚えてる。



(……ううう、顔がもたない……けど)



ちょっとだけ、胸の奥がふわっとする。



(……嬉しかった、よね)



自分の布団の端を握りしめたまま、私は深呼吸してから、顔を洗いに立ち上がった。




そして騎士団本部――。



朝礼の時間、ライグルさんの姿が見えた瞬間、

(見れない!直視できない!)

私は慌てて別の方を向いた。



だが――



「……ミーナ」



突然、後ろから声をかけられる。低くてやさしい声。



振り向くと、そこにはいつもの無表情のようで、でも明らかに上機嫌なライグルが立っていた。



「……おはよう」

「昨日の……あれ、夢じゃないよね?」



近い、近い近い!

耳元で囁くんじゃない!昨夜の再現やめて!



「っ……あ、おはようございます……ライグルさん」



「“ライ”だろ?」



「…………っ」



(あああああああもうっ!!)



顔を覆いたくなる衝動を抑えて、小さく、絞り出す。



「……お、おはよう、ライ……」


その瞬間、彼の尻尾がぶん!と勢いよく振られる幻が見えた。




その日の訓練中。


部下A「隊長、今日やけに機嫌よくね?」

部下B「なんか……口元が微妙に笑ってる……こわっ」

部下C「もしかして彼女できたとか?」


ライグル(口角がやや上がっている)

「……(聞こえてるけど否定しない)」



その日の休憩時間、ミーナが水を飲んでいると。


「ミーナ」


また現れる。音もなく。背後に。


「……水、足りてるか?」


「え? あっ、はい……ありがとう、ご心配なくっ!」


(距離ちかい~~!無駄にやさしい~~!)


「……ミーナ」

「昨夜、俺が何回キスしたか、数えた?」

(ちょ、、ここ食堂!!しかもまだ昼ぅぅ...!!)



「数えるかーーー!!」

(……何その新手の拷問?)



「……じゃあ、また今夜、数えようか?」



「いやあああああああぁぁぁぁ!!」

全身を真っ赤にして叫んだ私は悪くない。



部下たち(遠巻きに)

「……あの二人、なんかもう……付き合ってるよな」

「隊長……あんな甘いやつだったっけ……?」

「いや、あれは糖度じゃない。溺愛だ。圧がすごい」




夜――ミーナの部屋前


「ミーナ、今日もありがとう」



「う、うん……あの……ライ?」



「ん?」



「ちょっと、私、恥ずかしくて……これ以上甘いと……死ぬかもしれない……」



「……じゃあ、今日は控える」



「(ホッ)ありがとう」



「じゃ、おやすみ?」

そう言ってまた私のおでこと、瞼、ほっぺたにキスを落とす。


「だからそれが控えてないの!!!」

(てゆうか、なんで口にしないの...!?照)


たいがい、重い愛に毒されていく私だった。




こうして――


付き合った実感がじわじわ湧くと同時に、

私は“劇重わんこ”ライに日々甘やかされ、

羞恥で毎日寿命を削られながらも、実は内心、嬉しさを噛みしめていた――。



♦︎翌朝


朝から鏡の前でぶつぶつ言ってる。

「昨日のライ、控えるって言ってたのに……あれで控えめなら本気が怖い……」


(でも、嫌じゃない。むしろ、ちょっと物足りな――)

「っっっなに考えてんの私ィィィーー!!」


_____



♦︎ライグル目線


ミーナの「ちょっと、私、恥ずかしくて……これ以上甘いと……死ぬかもしれない……」という言葉を聞いて、

俺は一瞬だけ眉を下げた。


「……そっか」


控える、と言ったのは本気だった。

彼女が嫌がることはしたくない。大事にしたい。ちゃんと、彼女の気持ちも守りたい。


――けれど。


その“控える”の定義には、“キスをしない”とは書かれていない。

彼女に触れることを、甘やかすことをやめろなんて、神でも言えない。


「……じゃ、おやすみ」


そして、ごく自然に。ごく当たり前のように、ミーナの額、瞼、頬へ。


キスは、控えない。


だって、それが“俺の一日を終える儀式”になってしまったから。

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