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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
6章 ラブラブ期突入

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97.返事

厨房の空気がまだ、少しだけレンさんの余韻を残している。

けれど、もう背中を押してくれる声がある。だから、進まなきゃ。


私は深呼吸をひとつして、厨房を出た。

今の時間、ライグルさんは訓練所にいるはず。



私は急ぎ足で駆け出した。

そこには隊員たちと打ち合うライグルさんがいた。私に気づくと、駆け寄ってきてくれた。


「ミーナ?どうした...?」

うぅっ、汗が光って眩しい...シャツが透けて直視できない..


「どう?筋肉...」

ポッと赤くなるライグルさん。少女か...

顔が、いや筋肉がいい...私は筋肉に流される思考を戻した。



「あ、あの...今日お時間いいですか?」

他の人に聞かれないよう、私は彼の耳もとで囁く。



「あぁ。」

あ。垂れ耳と尻尾が見える..!!尻尾は揺れてる気がする!



「あの..大事な話なので..お部屋に伺っても?」

また耳元で囁く。人に聞かれないように、と考えて最善だと思ったのがライグルさんの部屋だった。



「んッ、、わかった...」

何か言おうとして、なぜかまた赤くなったライグルさんは、短く返事をした。



(側からみたら、完全にイチャつくカップルである。後日、あの銀閃の騎士が、囁かれて赤面してた。と伝説になった)



***



夜も更けて、騎士団寮は静けさを取り戻していた。

廊下を進む足音だけが響いて、自分の心音と重なる。



ライグルさん、まだ起きてるかな。

夕方のあの時、彼の瞳は――どこか、何かを言いかけていた。



扉の前に立つ。

手を伸ばす。けれど、触れる寸前で止まる。



……だめ、怖がらないって決めたんでしょう。



小さく自分に言い聞かせて、ノックを二度。



しばらくの沈黙のあと、ゆっくりと扉が開く。

中にいたのは、薄手のシャツ姿のライグルさん。瞳が、こちらをまっすぐ見ていた。



「……どうした?」



声は低く落ち着いていたが、どこか緊張しているのがわかる。

私はは、小さく笑った。



「少しだけ、話してもいい?」



ライグルさんはは黙ってうなずき、部屋の中に招き入れてくれる。

小さなテーブルを挟んで、ふたりきり。

静かな灯りの下、ミーナはゆっくりと言葉を紡いだ。



「今日、レンさんと少し話してたの。……それで、ちゃんと考えてみました。」



ライグルの金の瞳が、少しだけ揺れる。

(なぜその名前が...アイツ...ミーナのなんなんだ。舌打ちしそうになるのをこらえるライグル)



けれど、口を挟まずにただ、待っていてくれた。



「あなたが、何を背負ってるのか、全部はわからない。……でも、知りたいと思った。ちゃんと、受け止めたいって思ったの」

(あいつ...何を喋った..?)



言いながら、心が波打つ。けれど、今はその波に飲まれない。



「私ね……ライグルさんが私の過去を知って『それでも側にいたい』って言ってくれたこと、すごく嬉しかった。



すごく怖くて、どうしていいか分からなかったけど……本当は、ずっと――私も、そう思ってたのかもしれない」



喉の奥がつまる。息を吸うのが苦しいほど、胸がいっぱいになる。



それでも、逃げない。



「だから……」



私は、彼の手にそっと自分の手を重ねた。



「……わたしも、ライグルさんの側にいたい。これから先、何があっても」



ライグルの瞳が、大きく見開かれた。



それは驚きと――確かに、安堵と喜びの色だった。



沈黙のなか、彼の手がゆっくりとミーナの手を包み返す。



「……ミーナッ」



その名を呼んだだけで、声がかすれた。

でも、それでも彼女は笑ってくれていた。すこし泣きそうな笑顔で――。



ライグルはその手をそっと引き寄せながら、確かめるように言った。



「……今の言葉……本気、なんだな?」



ミーナは小さくうなずいた。



「うん。本気だよ」



その瞬間、何かがほどけるように、彼の肩から力が抜けた。



「……ずっと、こうしてほしかったんだ」



手を、肩を、そして背中を、やわらかく抱き寄せる。

その腕の中で、ミーナの心音も、彼の鼓動も速くなる。



けれど、離れたくないと願う気持ちは、二人とも同じだった。



「ミーナ……俺のこと、なんでも話す。……今までのことも、これからのことも。必ず...」



一度、言葉を切る。

そして、彼の金の瞳がまっすぐに見つめてきた。



「だから……ミーナ?俺のこと……『ライ』って、呼んでくれ」



「……え?」

(やばい、またおねだりわんこモード...!!)



「ミーナがそう呼んでくれるなら、……もう、俺は、どんな過去だって背負える気がする」



言葉が熱くて、真剣で。

ミーナは目を見開き――そして、静かに微笑んだ。



「……うん。わかった、ライ」



その呼び方が、こんなにも嬉しいなんて。

ライグルさん、ライは顔をそらす間もなく、何かに突き動かされるように、ミーナとの距離を詰めた。



「ミーナ……好きだ……!愛してる...」



あ、愛してるって...ぶわあっと私の体温が沸騰する。



そして、唇を重ねるにはまだ一歩を残して――

彼は、私の額にそっとキスを落とした。

(ち、近いってぇぇ)



そのまま、鼻先、頬、こめかみ、まぶた――

まるで「大好き、ありがとう」と、何度も言うように。まるで「もう離さない」と、願うように。



顔中に、柔らかなキスを何度も。

(ぎゃぁぁ、鼻血...でる)



私その優しさに目を閉じながら、ぽつりとつぶやいた。


「……ちょ、ライグルさん?」



....反応なし



「あ.....ライ?」



「ん?」



「……ちょっと恥ずかしくて」

きっと私の顔は真っ赤。



「ふふっ、まだ門限までは時間があるよ……俺たち恋人...だよね?」

(やばい、完全に目が捕食者のそれだ)



「は、はいぃ」



そう言った私を、彼は抱きしめたまま、灯りを落とすことも忘れて、静かな夜のなかでただ彼女の体温を感じていた。



――こうして、ふたりはようやく「恋人」になった。



俺。よく耐えた ライグル後日談


「……ミーナ、ほんとはな」

「お前が訓練所で『部屋に行っていい?』って言ったとき」

「俺、理性どっか飛んだ」

「でも、お前が……こんなふうに笑ってくれるなら……」

「俺、耐えてよかったって、今、心の底から思ってる」

「……えらいね、ライ」

溶けそうな笑顔のライグル。


重甘狼、ヤンデレ風味です

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