94.供給過多
糖度、上げていきます!!!
ーーある朝の食堂
(ミーナが席に着こうとすると、ライグルがすっと隣に座る)
「おはよう、ミーナ。隣、いい?」
「えっ、べ、別に……(いつも反対側なのに)」
ライグルさんは私のカップに紅茶を注ぐ。
「……はい、どうぞ」
「っ……! な、何でそんなに自然に……朝から……」
ミーナが小さく赤面してうつむく。
その様子を少し離れた席で見ていたジュリオが、ニヤリとする。
セリアもミーナの照れが移ったのか、赤い顔で様子を伺っている。
「おいおいおいおい……あれマジで告ってんの? 返事もらってねえのに、堂々と“彼氏面”しとるぞ……」
ジュリオはひそひそ声で、じっと見ている。
「“まだ振られてない=オレのターン継続中”理論かな。らしくないくらい攻めてるね、ライグル」
小声で囁いたのは、ちゃっかりその場に現れていたレオ(アレクセイ)
「返事待ちのくせに、あの余裕顔。メンタルの鋼かよ……俺なら胃に穴開くっての」
ジュリオはぼやきながら、手元のパンをもそもそとかじる。
「……あれが恋の前線だ。俺も見習おう。……エミリアに、な」
「え、アレク殿下、何しに来たんすかマジで!?」
(やば、バカップルの波動が殿下にも感染ってる......!エミリアさん尊死するっしょこれ)
「心の栄養補給だよ。人の初恋って、見てるだけで美味しいから」
「殿下~~~ッ、暇か!!!!!????」
「ジュリオくん。私が来るときは、何かあるときだと思いなさい?」
「やな予感しかしねええぇえ……」
ーー翌日、中庭にて
春の昼下がり、私は中庭のベンチで書類を確認していた。
木漏れ日が心地よく、ページの上にひらひらと揺れる。
すると、影が一つ――。
顔を上げると、ライグルさんが花を一輪手に持って立っていた。
「……はい。ミーナに似合いそうだったから」
「えっ……」
差し出されたのは、庭の隅に咲いていた淡いピンクの小さな花――。
「ほら、ここの色……君のほっぺと同じくらいだな、って思って」
「なっ……!」
顔が一瞬で熱くなるのが分かる。
けれど、ライグルさんは悪びれもせず、そのまま隣に腰を下ろした。
「この間、寝不足って言ってたよな。あんまり無理しすぎないように」
「……聞いてたの?」
「ミーナのことは、だいたい見てる。気づかないふりしてただけ」
(ライグルさん、言ってる本人が照れてる。耳が真っ赤)
「…………っ」
――ふたりきり、かと思いきや、背後の植え込みから「ガサッ」と音がした。
(……金髪と黒髪が見える)
「……ちょ、まじで毎日あのテンションなのかよ……」
ジュリオが目を見開いている。
「花か。美は心を豊かにする……ふむ、俺も次に使おう」
アレクはしたり顔で頷いた。
(な、何であんたたちがいるの!?)
振り返った私と目が合い、ふたりは同時に口元に指を当てる。
「しーっ」
……そっと植え込みの陰に消えていった。
「……なんか、みんなに見られてる気がする」
「そう? ……俺にはミーナしか見えてないけど」
「~~~~っ!!!」
ーーまたある日
甘い……ライグルさんが甘すぎる……
告白の返事を考える暇もないくらい、連日ずっと。
ふぅ……。
私がため息をついた瞬間、ジュリオさんがひょこっと近づいてきた。
「なあなあ、ミーナ嬢~? これ放っておくと、俺らまで糖分で倒れる未来が見えるんだけど。
で? 返事は?」
「ま、まだしてませんっ! というか、今はそういうの……!」
直球の質問に、あたふたと動揺する。
「返事はゆっくりでいい……ミーナ、今日もかわいい……」
――ちょ、そこにいたの!?ライグルさん!
「~~っ!!(顔真っ赤)」
しれっと甘い言葉を投げてくるライグルさん。ほんと、しれっと!
「うん、これはいいぞ。朝から目の保養だ。実に尊い」
どこから湧いたのか、レオも当然のように立っていた。
「ライグル、テメェついに恋愛脳にバグったか……」
「いや、俺は別に。ミーナがかわいい。それは事実だ」
「ぶほっ。はいはい、お熱いことで」
……もう、本当に……供給過多です!!
もうお前らはよ付き合え・・!!!




