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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
5章.蜜と毒の幕開け

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83.ヨナスのジュリオ観察

視線の正体

ここ最近、商談のついでに騎士団本部にに立ち寄ることが増えた。レンがあれやこれや、ミーナ嬢が気に入りそうなものを持ってくるからだ。



妹は今日も、厨房に、洗濯だの掃除だの、妙に甲斐甲斐しく動き回っている。


 


「セリア……おまえ、働きすぎじゃないか?」

「はいはい。兄さん、ガタイがいいのが取り柄でしょ? こっちもお願い」


 

返事も聞かず、洗ったばかりの制服の山を押しつけられた。

仕方ない。こっちも妹には甘い。


 


そんなある日。訓練場の端で、例の“ジュリオ”を見かけた。


 

金茶の髪に軽い笑み。

いつもどこかヘラついていて、どうにも信用ならない。


 

(妹をからかうような態度も気に入らん)




そう思っていたのだが――


 


「隊列の間隔が開きすぎ! そこの盾、重心が前すぎる!」

「はい! 副隊長!」


 


訓練場にて、的確な指示を飛ばすその姿に、一瞬、目を奪われた。

その直後、模擬戦で素早く敵役を倒していく。動きも鋭い。余裕もある。


 


(……おや?)


 


ふと場所を移すと、厨房でも別の顔を見た。


 


「はい、これミーナちゃん用の紅茶! 甘さは控えめなやつね!」

「……ミーナ嬢は、甘いものが苦手なのか?」


 


厨房の下働きの若者と、何やら打ち合わせ中。

彼の口調は軽いが、段取りは早く、無駄がない。


 


部下の若い騎士たちが、手を止めて彼に笑いかける。


 


「副隊長が動くとスムーズっすね〜」

「うちの隊、空気いいっすもんね」


 


人望がある。軽口に見えて、気配りもある。

しかも、周囲に安心感を与える柔らかさを持っている。


 


(……どういうことだ?)


 


別の日には、資料運びをしていた妹の重そうな箱を、何も言わずに持っていた。

そのあと叱られていた。

「手伝えとは言ったけど、黙って運んだら意味ないでしょ!台帳ズレる!」

「す、すんませ〜ん……」


 


(尻に敷かれてるのか?)


 


だが、嫌がってる様子はない。妙に嬉しそうですらある。

その後ろで、使用人長のマチルダ女史と談笑する姿もあった。


 


(あいつ、誰とでも仲良いな)


 


そしてまた別の日。

ギルバート団長とアレクセイ殿下の真ん中で、何か真剣な顔をして話しているのを見た。


 


その顔は、軽口を叩く男のものではなかった。


 


――本物の“参謀”の顔だ。


 


剣が立ち、諜報もできて、人望もある。

それでいて、妹にはあの態度。


 


(……有望なやつなのかも....しれないな)


 


騎士団をあとにしながら、ヨナスは静かに思った。


 


ただし。


 


(セリアの気持ちを傷つけるようなことがあれば……話は別だが)


 


その胸には、商人としての理性と、兄としての警戒心が、まだ同居していた。


ジュリオをロックオンした、兄目線が描きたくて

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