75.緊急会議2
一週間後、団長室にて
登場人物
ギルバート団長(良心)
アレクセイ(煽り系王子)
ライグル(嫉妬メラメラ狼)
ジュリオ(煽り系スパイ)
――団長室にて。
前回の会議から約1週間後。
ギルバートがいつものように腕を組み、机をコン、と指で叩いた。
ソファには、アレクセイ殿下とライグル。机のそばには、報告のためジュリオが立っている。
「さて。先週の“例の件”――ラン商会の動向について、報告を聞こうか」
「お前が探ってたレンってやつの動向、まとまったか?」
ギルバートが口を開く。
「はい。数日前からミーナ嬢と妙に接点が増えてまして。」
(ビキッ...)
ライグルのこめかみから音がした。やべぇぞこいつ...ジュリオは横のライグルを覗き見る。
「主に……食関係です」
「ほう、食。胃袋から口説くとは古典的だな」
まるでミーナが、レンを口説いているような口ぶりのアレクセイ。
ライグルのこめかみに、また血管が浮いた。
「食関係って、例えばどんな感じだったんだ?」
ライグルがぐっと身を乗り出す。ジュリオは、ぽりぽり頬をかいて、こう言った。
「んー……なんか、楽しそうでしたねぇ、ミーナ嬢とレンくん」
「……楽しそう?」
「ええ。試食とかしてましたよ、一緒に」
ライグルの顔のピキピキが止まらない。
「ミーナ嬢が厨房で作った、新メニュー(オヤコドン)を一緒に試食したり、調味料について語り合ったり……。感想も丁寧だし、じゃあ支店、案内しようか?”って。あの人、意外とマメっすよねぇ。
会話を聞いてると、なんか新婚さんみたいで.....その.....」
なぜか言葉を詰まらせるジュリオ。
「あ?」
どすのきいた提案が聞こえる。
ジュリオは口を滑らせた。
――空気が、止まった。
「あ〜、まるで夫婦で営む小料理屋だなぁ〜、なんて。あっはは」
アレクセイは空気を読んでなお、火に油を注ぐ)
(や、やめて殿下...)
祈るような顔でアレクセイを見るジュリオ...
ジュリオが何か変なことを言ったと気づいたのは、すでに遅かった。
ゴリッ。
「……おい、今なんて言った?」
ライグルの拳が、何かを握りつぶすような音を立てる。
「え、あ? あの、その、なんか……ちょっと、雰囲気が……?」
「へえ……ジュリオ、お前、新婚さんて言ったよな……?」
「ち、ちょ、ライグル、違うって...そういう意味じゃ!いやでもほんとに、ただそんな雰囲気でさ...自然にこう……」
(あ、俺オワタ....)
「ギャアアアアアアアアア!!!」
やばい、ライグルの殺気がやばすぎる。
ジュリオは、咄嗟に部屋の隅に逃げ込んだ。
ハハハハハッ
腹を抱えて笑うアレクセイと
「お前らぁぁ、何してる!!」
団長の怒号が響き渡る。
ちょっとしたカオスだ。
「....で?続きを報告しろっ!」
「は、はいっ!昨日は“王都から2、3時間のところにあるラン商会のフェルデン支店に一緒に行かない?”と誘われてました」
(場が静まる……)
その瞬間――ライグルの瞳が、怒りに染まるように金色に揺らめく
「フェルデン支店!?ミーナと二人きりで!?ふざけんな!!そんなの許すわけねぇだろ!!」
ライグルが声を上げた。
「まあまあ落ち着いて?ライ」
アレクが手をひらひらさせライグルに視線をやる。
「あ〜、いや、まぁ業務の一環って感じの空気で、個人的なデートってわけでも……。でも正直、レンのほうは明らかにミーナ嬢に気がある様子で」
「まあまあ、良きかな良きかな。いい刺激になるじゃないか、ライグル?」
アレクセイはニヤニヤ顔で続ける。
「刺激じゃねぇよ!!俺も行く!!絶対行くからな!!」
「……仕事としては“同行”も一理あるな。護衛って名目でくっつけるか」
「……まあ、商会のほうも本気でフェルデンに販路拡大を狙ってるのか。そのための足掛かりに作った支店なんでしょうか。何でかヨナスさんまで、まだ騎士団寮近くの宿にいますけど。お見合い終わったのに」
「…………(お前のせいだよ)」
親心もとい兄心がわかるギルバートが1人小声でつぶやき、いつものように腕を組んだ。
「……実際、調査対象なら同行しておくのは合理的だ」アレクセイが楽しそうに笑っている。
「あ、でもいいのかい? ――ミーナとって、君はなんなのさ」
「……行くって言ったら行くんだよ!!! …俺だって、ミーナと……(デート、したいんだよ……!)」
ライグルは一瞬止まって、言葉を続けた。
最後の心の声が聞こえたのか、アレクセイはまた腹を抱えて笑いだし。
ジュリオは「なんでヨナスさんまで..」と考え始める。
ギルバートはまた溜息をついた。




