73.どんまい...
ーー厨房にて
お見合いから数日後、昼下がりの厨房。
パンの仕込みを終えた私に、セリアさんがさらっと報告してくれた。
「……ま、縁談は流れたけど、いい人だったわよ」
「兄さんともちゃんと話せたし、結果としては悪くなかったかな」
そういうセリアさんの表情は、どこかスッキリしている。
「そう……よかった……」
「……ううん、ほんと、よかった……!」
私は思わず二回言ってしまって、セリアさんにくすっと笑われた。
セリアさんがどこか遠くに行ってしまう気がして、正直ちょっと、いやとっても不安だった。
でも、セリアさんががちゃんと自分で選んで、ここに帰ってきてくれたのが、何より嬉しかった。
きっと、あのヘタレ(ジュリオさん)もほっとしていることだろう....
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ーー訓練場にて
「……終わっちゃったんだな、セリアちゃんの縁談……ああ、彼女はもう、遠い存在に……」
ジュリオは盛大に勘違いしていた。
隊員たちがざわつく(ひそひそ)
「副隊長……なんか、しょんぼりしてません?」
「セリアさんに振られた……とか……?」
「うん、あるある……」
「でもさ、振られてるのって...いつもじゃね?」
「..........だな」
いつもの軽口のせいで、本気で振られても通常運転と間違われるジュリオ....どんまいである。
厨房で仕込みを終え、私とミーナさんは洗濯場に向かう。
ちょうど訓練場近くに廊下を通りかかったとき、意外なものを発見した。
……え、ジュリオさん落ち込んでる?
あれ、ジュリオさんっ.....なんで?セリアさんの縁談解消になったのに...?
ミーナとセリアが通り過ぎるのをちらっと見て、ジュリオはハッとする。
(....セリアちゃん!いつも通りだ.....しかも、笑ってる……幸せそうだ……!やっぱり結婚するんだ……!)
(もう俺なんかが入る余地は──)
なんか誤解が生まれてる気がするけど.....
……まぁ、いっか...
セリアさんが元気そうなら...!
いつもの軽薄さが祟り、あまり心配されないジュリオだった。どんまい。
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