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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
5章.蜜と毒の幕開け

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72.ジュリオヘタレる


──王都の片隅、借り宿の通りを歩きながら。


ジュリオは、ふっと空を見上げた。

快晴。なのに、気持ちは晴れない。



お見合いのカフェまでついて行き、帰りも護衛?も兼ねて、セリアの後をついて来てしまった。

(……セリアちゃん、地方に嫁ぐのか……)



あのカフェで、楽しげに紅茶を飲んでいたセリアちゃんの笑顔。

思い出すたび、なんかこう、胸がズシンと重い。



(あれって、見合いが上手くいったん……だよな?)



別に正式に聞いたわけじゃないけど、空気で分かる。

それなりにいい雰囲気だったっぽいし、向こうは貴族で育ちも良さそうで、安定した生活もあるんだろう。



(そりゃ……俺なんかよりは、ずっと──)



自分で思って、勝手に落ち込む。



気づけば、セリアちゃんは、兄ヨナスとレンが泊まっている宿へ向かっていた。



セリアちゃんに声をかけようか...



でも何ていえばいい?

(……バカか、俺)



一度、足を止めた。

目の前の宿の窓には、レースのカーテン越しに人影がちらついた気がしたが、気のせいだと思って気にも留めない。



(……セリアちゃん、平気そうだったな)



あんな大事な話の帰りなのに、いつもと同じ調子でさっさと歩いて。強い。いや、強すぎる。

(まぁ、そこが好きなんだけど)



俺はこんなに凹んでるのに……え、セリアちゃんはもう平気なの?


いや、きっと平気なんかじゃない。気丈に振る舞ってるだけだ。

でも、あの笑顔は──……



(……分からん)



やっぱりセリアちゃんに声を掛けようとするが、、どうしてもできない。



勝手に浮かれて、勝手に落ち込んで、勝手に悩む自分が、バカみたいだ。

けど、考えるのをやめたら、それはそれでモヤモヤする。



(……なんでだろ。こんなに気になるの、セリアちゃんが相手だからなんだろうな)



気づけばまた、何歩か進んで戻っていた。

自分でも呆れるほど、挙動不審な動きをしている。



通りすがりおばあちゃんに「迷子かい?」と声をかけられ、「い、いえ、道は知ってます!」と全力で否定して、さらに凹む。



(……だめだ。いったん頭を冷やそう)



けどその前に、もう一回だけ、宿の前を通ってみよう。

それとなく通って、ちょっとだけセリアちゃんが元気かどうか……なんとなく、確認できたら。



そんな言い訳を自分にして、ぐるっと回るようにしてまた戻り始めた。



──彼はまだ知らない。

その窓の奥から、じっと自分を見つめる視線があったことを。



兄の目が、静かに、しかし確かに、彼を“審査対象”として捉え始めていることを──。


セリアが結婚すると勘違いジュリオ

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