63.チラつく筋肉
丼が空になり、ライグルさんは静かに息を吐いた。
「……うまかった。ミーナ、ありがとう」
そんな風に真っ直ぐに言われると、また心臓が変な動きをする。
時計を見ると、もうすぐ21時。
「っ、やば……!そろそろ帰りますね! 夜ですし、門限……!」
私が慌てて立ち上がった拍子に、コップの水が倒れて、音を立ててテーブルに広がってしまった。
一部は腰かけていたライグルさんの胸から膝のあたりまで飛んで――
見えてはいけないものが見える....
シャツ越しに浮かび上がる、鍛えられた胸板のライン……ああ、見てはいけないものが見えてる……!
「あっ、ごめんなさいっ!」
私は咄嗟に近くのふきんを手に取って、濡れたシャツやズボンの太ももあたりを押さえる。
……が、その下から透けて見えたのは、さっきよりもずっとリアルなの腹筋のライン。ふきん越しにわかる、太ももの感触。
「……あっ....そこ、拭かなくても...」
気持ち顔も耳も赤いライグルさん。
「ひゃっ……!? す、すみませんっ!」
(や、やばい、触っちゃった!!痴女じゃない?大丈夫?私!!!)
「……やばっ...俺、さっきからずっと、理性で耐えてるんだけどな」
小さく呟かれたその声に、私はまた背中まで熱くなる。
「ほ、本当にごめんなさいっ! じゃ、じゃあ、おやすみなさいっ!!」
私はもう顔が爆発しそうで、扉を開け外に出ようとして、取っ手に手をかけ瞬間、ライグルさんの手が重なった。
「……危ないから……部屋まで送るよ?」
「はいっ、、!!」
胸に手を当てて、どきどきを落ち着けようとしても、落ち着く暇がない。
部屋に戻っても、今日はしばらくは眠れそうにない気がした。




