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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
4章 日常と秘密

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50.殿下...!!

――― 騎士団本部・厨房


「じゃあ僕、また11時ごろ来るね。……おむすび、楽しみにしてるよ?」



「は、はい。任せてください……!」



そう言って、レオはひらりと手を振りながら、軽やかに去っていった。



見送ってから、ミーナは小さく深呼吸する。



「……さて。ちょっと張り切っちゃおうか……!」



さっそく米を研ぎ、鍋で炊き上げ、塩むすびを握る。



ライグルさんが約束を覚えていてくれたこと。

おむすびの試食が好評だったこと。

色々あって、今日はちょっとだけ特別な気分だった。



炊きあがったご飯の甘い香りに包まれながら、気づけば、簡単なおかずまで作り始めていた。



えぇっと、余りの素材……マイルズさんに許可をもらって、

卵焼き。ウインナー。りんごをウサギ型に切って――



「えーっと……なんか……幼稚園児のお弁当みたい……?」



料理のセンスが不安すぎる。味も見た目も、きっとまだまだだ。

でも、“誰かのために”って思うだけで、いつもの料理がなんだか特別に思えた。



(……ライグルさん、喜んでくれると、いいなぁ)





――― 11時ごろ、再び厨房



「できた〜?」



にやけ顔のレオが、ふらっと戻ってきた。



「ちょうど今、詰め終わったところです!」



ミーナが弁当箱に蓋をして、包もうとしたその瞬間―



「じゃ、味見――」



「だめですっ!!それはライグルさんのっ」



パシッ!



「……っ」



レオの手が、ミーナに軽く叩かれる。



「レオさんの分は、こっちです!」



そう言って、既に用意していた彼の分の弁当箱を丁寧に差し出した。案内のお礼にと余分に作っておいてよかった。



(その手際と自然さに、一瞬、厨房にいたマイルズが息を呑む)



(……お、おいおい……。ミーナ……あの殿下の手を叩くとか、正体知らねぇのか!?)



だが当の“殿下”はというと、手を押さえながら、どこか楽しそうに微笑んでいた。



「おやおや、痛いなぁ。ミーナ嬢、案外こわい?」



「お行儀悪い人には、です!」



きっぱり言い切るミーナに、マイルズがもう一度ひそかに青ざめたのは言うまでもない。



「はい、じゃあ、ライグルさんの分も持って……お願いします」



「え? 君も行かなきゃ!」



「えぇ?! 仕事中ですし……」



チラッと、レオがマイルズの方を見た。



「ミ、ミーナ!行って差し上げなさい!……お困りだろう?」



マイルズが慌てて言う。


「? は、はいっ。ありがとうございます。では……行ってきます!なるべく早く戻ります!」



ペコリ、と頭を下げる。



「い、いやぁ、まぁ、ゆっくりとな……行ってこい……」



「さぁさぁ、任されたことだし。ニヤッと」



「いざ、仲直り作戦へ!」



レオさんと共に、私は執務室に向かった。


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