43.そ、それは見せる用です!
私はお腹いっぱい&幸せな気分で歩いていると、ライグルさんに声をかけられた。
「他に行きたいところはある?」
そうだ。ふと私は自分の服に視線を落とす。今日の服はセリアさんからの借り物で、ボロボロの服しか持っていない。もし手頃なものがあれば、普段着にも着れるワンピース、寝巻き、下着などが欲しかった。
「あっ、実はこれ……セリアさんからお借りしてる服なんです。私、普段着とか……あんまり持ってなくて……手頃な価格の服屋さん、、ご存知ですか?」
ライグルさんは一呼吸考えてから
「じゃ、ちょっと寄るか」と颯爽と服屋へ案内してくれた。
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案内されたお店に入る。店内は、平民にも買えそうな品から、貴族には手に取りやすい価格の品が揃っていて、品質も悪くなさそう。明るくて親しみやすい店員さんが出て来てくれた。
私はは、目移りしながらも必要なものを考えて選び始めた。
普段着のワンピース、ズボン、寝巻き……あ、あと、できたら下着もちょっとみたい。
(でも、奮発しすぎると贅沢かな?)
私の今の寝巻きは、実家から持って来た、ボロボロのシュミーズ。薄い綿で足首あたりまである白、いや黄ばんだワンピースなのだ…
前世であった、体操服ジャージの半ズボンとティシャツ、、みたいな服があったら、寝巻きとして最高なんだけど……
なんて脳内会議をしながら服をみていると
背後でライグルさんの声がした。がばっと振り返ると顎、首筋が目の前で、、!ち、近い!!
「ミーナ?どんなのを探してる?ワンピースだと、、これとこれとこれ、あとこれ、、、どうかな?」
キラーん!
その瞬間店員さんの目が光った気がした。
「そーうですね、お美しいお嬢様にはどれも似合うかと、、!いくつか試着してみられませんか?」
「あぁ、頼む」
ミーナが返事をする前に、あれよあれよと試着する運びとなった。
♦︎試着室のカーテン越し
「……えっと、じゃあ、これから着ますね……」
1着目は可愛い花柄のワンピース
「うわっ、思ったより……スカート、ふわふわ……」
おそるおそるカーテンを開けると
「あ、似合ってる。……っかわいい」
ボッ……
2人とも赤くなる
「まぁ!まぁまぁ(ニヤニヤ)とってもお似合いですよ!この淡い色味が、お嬢様のお肌にぴったりで!」
「い、いえ、これはちょっと……可愛すぎるかも……」
「そんなことはない、似合ってる」
ボッ
また2人で赤くなる。
店員さんニヤニヤ
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2着目は胸元が少し開いたデザイン
「え、これ、ちょっと……(そわそわ)」
カーテンを少しだけ開けて小声で呟くミーナ
「首まわり、こんなに空いてるの、恥ずかしい……!」
「……んっ。それは(眩しい...!!)」
カーテンの隙間から、ちらっと見えた鎖骨に気づいてしまった。とっさに目を逸らす。
「あらあら、見てあげてくださいな、とても麗しかったですから!!」
店員さんに促されるも、恥ずかしくてミーナはカーテンから出れなかった。
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3着目は大人っぽい黒のシンプルドレス
「……おお」
(言葉をなくしてじっと見るライグル)
「え? へ、変じゃないですか……?」
「いえ、落ち着いた色味で、お嬢様の知性が引き立ちます!」
「……ちょっと、身体のラインが(ボソッ)」
「なっ……こ、これは着ないですっ!!」
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4着目はカジュアルなワンピース
若葉のような淡い緑色が何とも美しい。
「……これ、ちょっと楽かも」
(カーテンを開けてくるっと回るミーナ)
「うん、それだ。それが一番“らしい”気がする」
「えっ、そ、そうですか……?」
「柔らかい素材で動きやすく、でも清楚で女性らしい。完璧ですね!」
ライグルさんと店員さんは楽しそう。
試着に疲れた私は、やっと決まった一着を買うことにした。
試着室でやっとこのとで服を着替え、一息ついた私は、店員さんにこっそり、(前世で着ていた寝巻き)ジャージ半ズボンティシャツみたいな服はのはないか、聞いてみた。
「あの……すみません、ちょっと……寝巻きにもなるような……半袖シャツと膝上の半ズボンみたいなのありますか?あと、下着って……おいてありますか?」
「あら♡ もちろんございますよ。下着は……やっぱり彼氏さんとご一緒ですし、ちょっと特別なやつ……?」
「へっ!? い、いえっ、違います!そんな、ちがっ……!」
(か、彼氏って……!!)
赤くなり固まるミーナと、目が合うライグル。
「ん? どうした?」
そこで店員さんが、何か思いついたように、パチンと手を打った。
「彼氏さん! ちょうどよかった♪ お嬢様に似合いそうな、こちらのシリーズなどいかがでしょう?」
店員さんはずんずん進んで、ライグルさんを少し仕切られたコーナーに連れていく。
そしてカーテンを開けると……
「夜のお供にピッタリな――ふわふわレースと透け感の奇跡的バランス♪“彼女さんに着てほしい”ってのがあれば、遠慮なく言ってくださいね♡」
「っ……いや……俺は別に……」
直視できず、赤い顔で顔を晒すライグルさん……
なんか……ごめんなさい…
彼氏と間違われるし、色々見せられてるし…チーん…
意識を飛ばしかけた私は、店員さんのところへ慌てて駆けつけた。
「す、すみません!それじゃないです! そういうのじゃなくて! もっとこう、布の多いやつというか、あの、実用の!着るだけの!!」
店員さんはぽかんとしつつ
「あっ、そっち……? ごほんッ…じゃあ奥の“実用品”コーナーですね!このへんは“見せる”用なんで~♪」
「い、いいですっ!! 見せなくて汗!! 誰にもっ!!」
顔真っ赤で大混乱の私と、まだ赤いまま顔を逸らすライグルさん。ニコニコの店員さん。カオスな状況だれかなんとかしてくださいーー!!
⸻
私はようやく実用的な下着上下2組と、綿の半袖シャツと半ズボン1組を選んだ。
店員さんに半袖半ズボンの希望を伝えたら、
「えっ、これは下着っていうか……寝巻きにするなら、長めのワンピース型が主流ですね...」
と言われたので、やっぱりこの世界ではそうなのか……。でも、あれが一番楽なんだよな……外には着ていかないし、誰にも見せないから……きっと大丈夫。
と思い結局購入することにした。
下着についても、
「お目が高い♡ これ、最近流行り始めてるんですよ。ちょっと斬新だけど、動きやすくて快適で」
と言われ、
どうやら私が選んだ上下別の下着は、最近の流行りだったみたい?
試着も終わり、ミーナが選んだ品を店員さんが包んでくれている。
「……これだけ買って、意外とお手頃ですね。よかった、今日は初給料もあるし……」
支払いを済まそうと、レジに進むが、そこにはライグルさんが。。!店員さんと言葉をいくつか交わし、なんと支払いを終えたところだった。
(出すの図々しいかな?も一瞬迷ったが、ミーナの喜ぶ顔が見たくて買ってしまったライグル)
「……えっ? あの、ライグルさん!? 私、払うつもりで――」
「今日は“護衛付きの……初デ、デート”ってことで……俺に出させてくれないか?」
(照れながらデート!と言いきったよ!ライグルさん。なんだかこっちも恥ずかしくなる…)
「でも、それじゃ私ばっかり……。申し訳ないです」
ライグルさんは、一瞬迷った顔をして
「じゃあ――お礼に、今度俺のお願い、聞いてくれる?」
「……えっ?はい、なんでもいいですよ!?そんなのでいいんですか?」
「っ…ぁあ……。ありがとう」
なぜかまた頬を染めて,俯いたライグルさんだった。




