35.ライグル出張
ミーナが来週の火曜に向け、服を選んでいたその翌日...
―――騎士団詰所・朝。
「……ふぁぁあ……」
今日は土曜日。隊員たちがまだ寝ぼけ眼であくびをしている中、ライグルは朝から妙にキビキビしていた。
「今日から3日間、南の村の巡回任務に出る。戻るまで副隊長のジュリオが代理でまとめてくれ」
「了解っす! でも、3日後って、火曜……ライグル、お前大丈夫か?」
「……いや、大丈夫だ。急げば俺だけでも火曜の未明には帰れる。いや、帰る」
(火曜の午前十時。あの待ち合わせに、絶対に遅れるわけにはいかない――)
(ジュリオは思った。やばい、目が本気だ。金色になった今。)
ライグルはちらりと窓の外を見る。
小さな庭で洗濯物を干しているミーナの姿が見えた。
風に髪が揺れて、ふとこちらを振り返ったように見えたけど——たぶん気のせいだ。
「……火曜、街中に出る必要がある。だから、どうしても月曜には戻りたい。だから巡回は二日で終わらせる」
「二日で……!? あそこ、けっこう山道多いっすよ? ゆっくり行けば三日はかか……」
「ならば早く行って早く終わらせればいい。帰りは俺だけ先に出る。お前たちは後から帰ってかまわない。荷造りは済ませてある。馬を出すぞ。動け」
「えええええ!? ちょ、まだ朝メシ食ってないんすけど!? 隊長、なんか今日キビしくないっすか!?」
(ジュリオの心の声:これはもう、絶対“例の買い物デート”のためじゃん……!)
しかし、デートを知らない隊員には、さすが銀閃の騎士!火曜に、重要な任務があるのだろう。もの凄いやる気の人だと思われていた。
―――巡回先の村・夜。
焚き火のそばで、報告書をまとめながらライグルは、ジュリオから聞いたことを思い出していた。
それは、ミーナと親しいセリア嬢からの情報。
ミーナは、セリア嬢へのプレゼントと、「米?」という品を買いたいこと、私服がないこと、だった。
「……気が利かずに、すまない。服を前もってプレゼントすればよかっただろうか……。いや、突然贈られて気持ち悪いと思われたら詰む...ミーナにはいつも笑顔でいてほしい……いや、気持ち悪いと思う顔も可愛い気がする…」
よくセリア嬢にさげずまれだ目を向けられながらも喜ぶジュリオ、、とうとう俺も気持ちがわかってしまった……
焚き火の炎に照らされ、揺れる光の中で、ピクリと狼耳が出かけて——慌てて引っ込めた。
ミーナを思い出し口元が緩んでいるのを自覚して、ライグルは慌てて咳払いでごまかした。
―――火曜・未明
陽が昇る前から馬を走らせ、予定よりずっと早く王都に戻ってきたライグル。巡回は終えたので、隊員たちより一足先に帰ってきたのだ。
そのまま騎士団詰所に飛び込み、報告書をばっと提出。
「ジュリオ、あとは頼んだ。俺はこれから休みを取る」
「お、お疲れっス……って、全速力で戻ってきたんスか!? 馬の息、荒すぎ!!」
「もちろんだ。まずは...風呂っ」
そして、光の速さで部屋に消えていった。
「……ライグル、完全にデート前の男や……。……がんばれ……」
それを見たジュリオがこっそりつぶやいた。




