34.ジュリオしばかれる
―――厨房裏の勝手口にて。
ジュリオは、セリアに呼び出されていた。
「ふへへ、ミーナちゃん初デート……隊長と二人っきり……いや〜、青春ってやっぱ眩しいなあ……お似合いだわほんと」
そんな呟きを背に、ひやりとした声が落ちる。
「――その話、詳しく聞かせてもらおうかしら?」
背中に氷柱が落ちたかと思った。
ジュリオの背を冷たい汗がつたう。
「……あれ? セリアさん? なんでそこに……その目、めっちゃ笑ってないッスね……?」
「ちょっと、来なさい?」
各してジュリオは連行された。
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「ねえ、ジュリオ。あたし、昨日ミーナから“初デート服がない”って相談されたのよ。
すっごく緊張してて、不安でいっぱいだったんだけどね?」
「あー……あー…………」
「で? あんた? なんでその話を、あたしがミーナに言われるまで、一言も知らなかったのかな?」
(こ、こわ……声のトーン低いまま笑ってるのに、空気が氷点下……!)
「いや、あれはですね!? ほんとに、突然決まったことだったんスよ!? しかもその、ミーナちゃんも“誰にも言わないで”って……!」
「ふぅ〜〜〜〜ん……そうなんだ〜?
つまり、“誰にも言うな”っていうなら、私にも言わないで当然だと。
――なるほどねぇ。あたし達って、その程度の仲だったのねぇ?」
「うわ、ちょ、ちょっと待ってくださいセリアさん! あっ、今“私たちの仲”って言いました?ニヤニヤ そこんとこ、よく聞かせて?」
「何いってんのよ、バカっ!」
「そもそもねジュリオ、あたし、隊長とミーナの進展を誰よりも楽しみにしてたのよ?
それなのに、あんたが一番おいしいとこだけこっそり見てたってわけね?」
「いやいやいや! こっちだって勝手に巻き込まれただけッスよ!? 見たくて見てたんじゃ……でも確かにちょっとキュンとは……あっ違っ、そういう意味じゃなくてっ!!」
「そっか〜、キュンとしたんだ〜?」
「ふぅ〜ん? 私がいながら、ねぇ?」
「違っ、違うから! セリアちゃん怖い!!」
「……ふぅ。ま、許してあげなくもないけど。
代わりに、あたしの買い物バッグ運び、三回分ね?」
「……え、それってあのいつも重いアレじゃ……」
「もちろん、アレよ、アレ!そして、ミーナとライグルさんの進展については、今後報告よろしくね?
いい? 変な妄想入れず、事実だけを、逐語でね?」
「うっ……(逆らえん……!)」
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――そしてその夜、隊員たちは目をこすりながら、ぐったりするジュリオを目撃する。
「……ジュリオさん、泣いてましたよね……?」
「セリアちゃん、俺は君だけが好きなのに……わかってくれたかな……でもさ、荷物運びはキツイわ……」
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しかしこの二人も、まだ付き合っていないのである。




