29.初給料日
「はい、ミーナの分だよ。よくやったね」
マチルダさんから手渡された小袋は、布越しでもずっしりと重みを感じた。
「ありがとうございます……!」
思わずこぼれた声は、自分でも驚くほど弾んでいた。
これは、三ヶ月の試用期間のうち——その最初の一月分。
初めて、自分の手で働いて得た“自分のお金”。
その嬉しさは、自然と顔に出ていたのだろう。隣にいたセリアさんが、ふわりと笑って声をかけてきた。
「ミーナ、よかったね。初給料おめでとう! そんなに嬉しそうにして……なにか欲しいものあるの?」
「はい、いろいろと! (セリアさんにお礼のプレゼント、買おう……)
やっぱり、自分で働いて稼ぐって、気持ちいいですね!」
思わず胸を張ると、セリアさんも優しく頷いた。
「ふふ、そうね……」
(最初に来たときとは、まるで別人みたい。表情も明るくなって……本当によかった)
「お休みの日に買い物に行きたかったら、街に出てもいいのよ?」
「……そうですね。考えておきます」
(そうか、普通に買い物に行けばいいんだ……ただ、またカーティスに会わなければいいけど……)
⸻
給料袋には、銀貨と銅貨を合わせて100ソル。
(日本円でいうと、10万円くらい)
試用期間中の新米使用人としては十分な額だった。
本採用になれば150ソル前後に上がり、能力次第で昇給もあるらしい。
(うふふ……今後のために、ちゃんと貯金しよう)
でも、まず欲しいものは——
「セリアさんへのプレゼントと、街で見かけたお米!」
前に見かけた白くて丸いあの“米”があれば、どんぶり物が作れるかもしれない。
ただ、セリアさんの好みがわからないのが問題だ。
(今回はサプライズにしたいし……でも1人で街に行くのは、やっぱりちょっと不安……)
考え込んでいるうちに、ある人物の顔が浮かんだ。
(そうだ。あのチャラいけど、妙に気が利く人——ジュリオさんに聞いてみよう)
短めにしてみました!
お給料を最初10万円にしました!1ソル→1000円、10ソル1万円、100ソル10万円のイメージです。




