28.筋肉後日談
(食堂・昼ごはん中)
セリアさんに、ニヤニヤしながら話しかけられた――。
「……でさあ、なんで最近ライグルさんのことチラチラ見てるの? しかもちょーっ照れてるのはなんでかな〜〜?」
「えっ!? べ、別に!?!?!?」
(べ、別に、あの筋肉をまた見たい……とかそんな邪な気持ちでは…ないっ…はず)
「ふ〜〜ん。そういや最近、“第二隊でやたら筋トレ増えた”って噂、聞いたんだけどぉ?」
「し、知らないです知らないです、何も知らないです!!(高速三段否定)」
「そう? だってミーナ筋肉好きなんだもんね? 顔赤くなってるもん」
「な、なぜ知って……!? 誰にも言ってないのに……! て、全然赤くなってませんーっ!!」
――そのとき、絶妙なタイミングで食堂にライグルとジュリオが入ってくる。
知ってそう、かつセリアさんに言いそうなのは……
「ジュリオさん! ですね? ……セリアさん、なんだかんだジュリオさんと仲良しですもんね?」
ミーナの指摘に、セリアは目を見開いたあと、ぷいっと顔を背けた。
「……別に私たちは、そういうのじゃ……っ」
そう言いながら、耳が真っ赤になっているのをミーナはしっかり見逃さなかった。(にゃ。姐さん、図星ですね)
そんなやりとりを見ていたのか、張本人・ジュリオは器用な笑みを浮かべてミーナたちのいるテーブルに近づいてくる。
「ん? おれ、なんか噂された?」
カラッと明るく言いながら、わざとらしくニヤニヤして、
「ていうかミーナちゃん、筋肉好きなの!? ライグルのだけ!? それとも俺みたいな細マッチョもアリ?」
「ちょっと、あんた黙ってて!」
「っ……」
(細マッチョもありだけど。セリアさんの手前、変な誤解されたくないし。筋肉よりも優しさだし。でも筋肉も好き……なんて言えば? 私は何が好き?……)
考えすぎた私は、とっさにこう答えた。
「私は、わんこが好きなので」
「ぶほっ!笑笑」
なぜかジュリオさんは腹を抱えて笑い、
ライグルさんは口元を手で押さえて、赤面している。色気が……ダダ漏れである。
「……わんこ、って……」
ライグルは視線をそらしながら、ぽつりと呟いた。
「……それ、俺のこと……なのか?」
「??」
「ぷぷっ、ま、なんだ。……よかったなぁ、そのわんこ」ジュリオさんが笑いをこらえながら言った。
「……ま、俺としては、わんこよりセリアさんが好きだけどね?」
「はっ? 何よ? ほんっと軽口ばっかり、このチャラ男……」
セリアさんは呆れたようにため息をつくが、その頬はほんのり赤い。
(セリアさん、やっぱり! はいはい、お熱いことで。ごちそうさまです)
「ニヤニヤが止まらないねぇ、セリアちゃん」
「ジュリオ、あんたも人のこと言えないでしょ……」
やばい、熱々だ。(ニヤ)
私は昼食が冷める前に、また食べ始めた。