27.洗濯場にて
流れ的に、この後に、28筋肉談に変更しました(>人<;)
「……もう。眼福…いや、まったく……」
ライグルさんの部屋で“あの事件”があった後、
ミーナは回収した洗濯物を両腕に抱え、庭先にある洗濯場へと向かっていた。
今日は雲ひとつない快晴。さわやかな風が吹いている。それなのに、まだ顔が少し火照っているのは、きっと……天気のせいだ。
パシャッ、ばしゃっ。
洗濯場には今日も、陽だまりの匂いと水しぶき、そしておしゃべりが満ちている。
「お疲れ様です。今日はお世話になります、厨房から来ましたミーナと申します!よろしくお願いします!」
「ミーナちゃん、よろしくね! 早速こっちのシーツお願い~」
「はい、今行きます!」
木のタライにシーツを浸け、泡立ちの少ない石鹸でごしごしと洗濯板にこすりつける。
洗濯機なんてあるはずもなく、結構な重労働だ。
それでも、いくつかのタライを囲んで2~3人ずつで洗っていると、自然と井戸端会議が始まる。
「ねぇ聞いた? 第二隊の副隊長さん、今朝も朝帰りだったってよ~。でもなんか、ボロボロだったから……振られたのかも?」
(ん? ジュリオさん……? あ、朝帰りって……)
実際は捕物があった夜勤明けでボロボロだっただけ。でも真相を知る者はいない。ミーナも含めて。
「マジ? あんな調子のいいイケメンがボロボロって、それ逆に萌える~」
「私だったら団長派だな~。あの傷、渋くてたまんないっていうか……!」
「でもさ、今一番アツいのって、やっぱあの隊長さんじゃない?」
「えっ、誰?」
「ほら、銀髪で銀の目の……ちょっと影のある感じの……ライグル様!」
その名前を聞いた瞬間、ミーナの手がぴたりと止まる。
「ライグル隊長? うーん、美形だけど……ちょっと無表情すぎない?」
「それがさ〜、女の子苦手なのかなーと思ってたのに、最近ちょっと違う感じ? 女の子に廊下で頭撫でられてたって噂よ?」
「えーーっ!? それって恋人!? だから最近、雰囲気が優しくなったのね〜。ね、ミーナちゃん?」
「えっ、そ、そうですかね!?」
(そんなに無表情じゃないし……。いつも優しげな感じだし……。ていうか、その“頭撫でてた子”って、私で……?あああ、今さっきの“裸事件”まで思い出したー!!)
「ふふん♪」
顔が真っ赤になったミーナを見て、お姉さんたちはニヤニヤ。
「だって、ミーナちゃん、最近よくライグル様と一緒にいるよね?」
「そ、そんなこと……ただの偶然ですよっ!」
「えぇ〜〜?? なんか怪しい〜! 洗濯する手、止まってたし~!」
「ち、違いますって!!」
女子たちの笑い声が、パシャパシャと水音にまぎれて広がっていく。
その中でミーナだけは、ひとり胸の奥がざわざわとしていた。
ライグルが自分を見るときのあの目は、どこか優しくて……
(……なんなの、もう……)
まだ、よくわからない。
でも、自分が“ちょっとだけ特別”なのかもしれない——そんな予感が、胸の奥で小さな鼓動を打っていた。




