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26.裸!?ですよ!

ミーナが厨房に配属されてから約一ヶ月。

朝の仕込みにも慣れ、ようやく戦場(※厨房)の立ち回り方が少しわかってきた頃だった。



「ミーナ、ちょっと洗濯場に手を貸してくれる? 今日は人手が足りなくて」

 マチルダさんにそう頼まれ、洗濯用の籠を抱えて寮の部屋を回ることになった。



 時間は午前八時過ぎ。

 ちょうど朝練が終わった頃で、廊下には汗で濡れた制服やタオルが入ったカゴがずらりと並び始めている。



(さて、回収回収♪)

(ホテルの仕事ってこんな感じだったのかな?)

 新しい仕事に胸を弾ませながら、足取り軽く洗濯物を回収していく。



 ──そして、目の前に現れたのは


(……ここ、ライグルさんの部屋?)



 カゴはまだ出ていない。

 一応ノックだけして、返事がなければ次に回ればいいか。



 コンコン。 



 ――返事は、ない。

 ……が、扉は、すこしだけ開いていた。



(えっ? 開いてる……あっ、カゴが見える!)



 すぐそこにある洗濯物を見つけ、そっと扉を押して中に入り手を伸ばした――その瞬間。



「ミ、ミーナ!?」


前から呼びかけられる声に顔を上げた瞬間、ミーナの脳内が静かにフリーズした。



(し、ししし水も滴るいい男!?)



まさにシャワー後、髪が濡れたまま、腰にタオル一枚のライグルが立っていた。

絹のようなきめ細かい肌に、水のしずく。引き締まった腹筋。広い胸板。濡れて強調される筋肉の陰影。



(見ちゃダメ、見ちゃダメ……って思ってるのに!視線が……あっ、肩のライン綺麗……!だめだめだめえ!!)


「……いい筋肉ボソッ


 思わず漏れた呟きに我に返り、慌てて口を塞ぐ。

(やばい、今の聞かれてない?聞かれてないよね!?)



 しかし驚いた拍子に、手にしていた洗濯籠をうっかり落としてしまった。

 中のタオルやシャツが、床に派手に散らばる。



「大丈夫か!?」

 ライグルが一歩踏み出してくる。


(ちょ、ちょっと待って、来ないで!それはありがたいけど、でも今あなた――!)



 筋肉が! 近づいてくる筋肉がまぶしい!破壊力がすごい……違う、そうじゃない!!


「ら、ライグルさん!? ま、まずは! 服を着てください!!」



 そして、ようやく自分の格好に気づいたライグルが、真っ赤な顔で慌てふためく。



「ち、違うっ、これは事故で……! カゴを拾おうと……! けっして君をどうこうしようとかそういう意図では……!」



 言ってる途中で自爆しそうになったのか、ライグルは言葉を詰まらせて顔を覆った。



「わ、私こそすみません!洗濯物を回収に来ただけで……まさか、そんなタイミングだなんて思わなくて……!」



「ご、ごめん……服、着るから……っ!」



いい筋肉から目が離せなくて、どうしてもチラチラ見てしまう私は後ろを向いた。



近くで聞こえる、シャツを着る衣擦れの音や、ベルトを締める音が妙に生々しくて、全然落ち着かない!



心の中だけじゃなくて、物理的に出そうだ鼻血が泣。

ここで出したらお嫁に行けない!私は、社畜時代のクソ上司を思い出して必死に耐えた。

 


 ──そして数分後。



 何事もなかったような顔で廊下を歩くミーナ。

 そして、ものすごく落ち着かない様子でソワソワしながらちょっと赤い顔で、ミーナを伺いながら後ろをついてくるライグル。


さながら、飼い主とわんこである。



そんな二人の様子を、廊下の角からそっと覗いていた人物がひとり。


「朝からやるねえ、ライグル。

「もう一歩で押し倒しコースだったのにな〜。……ま、初回はセーフってことで団長(保護者)には黙っとくか。

……ま、殿下には黙ってられる自信ないけどなぁ?」


 にやにや顔で呟いたのは、ジュリオだった。

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ジュリオさん約得〜
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