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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです!  作者: 緋月 いろは
2章 再会と黄金の瞳

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14.クズ男と銀閃の騎士

ライグル糖度上昇中。素で砂糖を吐く。...恐ろしい子!

「ミーナ?こっちこっち」



騎士団の厨房勤務に、段々と慣れてきた私は、ある日セリアさんと食材の買い出しに来ていた。



仕事とはいえ、寮の使用人姿で外を歩き回るのは良く無いので、今日は私服でローブを着、髪はハーフアップにしてややお出かけ仕様だ。



私の私服があまりにも古びていて、見かねたセリアさんが薄い黄色のワンピースが似合うと貸してくれた。



セリアさんは黄緑のワンピースにローブで、今日もとても素敵だ。

いつもは卸業者からある程度まとめて仕入れいるようだが、今日は急遽足りない食材があり、2人で来たのだ。



人々の喧騒や、新鮮な果物、野菜、お肉の屋台が並び、焼き鳥の香ばしい煙が鼻をくすぐる。蜜で艶めく林檎や、氷で冷やされた魚の瞳がきらりと光っている。



街に滅多に出たことのない私は、キョロキョロして「わぁ〜」と声をあげ、子どもみたいにはしゃいでしまっていた。土地勘が無い私は、セリアさんの後をついていく。



「よし!じゃがいもと、玉ねぎも買ったから、買い出しはこれで大丈夫ね!」



私たちは、思ったより重くなった袋を持ちながらセリアさんが言った。その時、



(あ!あれ?まさか、お米かな?

視界の端に白い米粒のようなものが、小盛りで置かれている?)



2度見したくて振り返ると、それは、確かに遠目だとお米に見えた。



「セリアさん!ちょっと気になるものが…!!」

って、

「セリアさんーーーー!!」



人混みの中、私はセリアさんを見失ってしまった。



まだこのあたりにいるはず。あまり進みすぎずこの辺りで待とうか?いや、真っ直ぐいったはずだから進むほうがいいの?考えながら立ち止まっていると



「……ミーナ?」


まさか……思い出したくもないクズ男の声がして、ハッと私は顔を上げた。



「よう、ミーナ、元気だったか?

お前が家を出たと聞いてどんなに心配したことか(絶対ウソだ。ニヤついた顔で隠せてない)

こんなところにいたんだな?」



(幸い私服でローブを被っているから、騎士団の使用人とはバレないはず?)



クズ男元婚約者のカーティス・グレイ公爵家次男は、おおかた昼間から酒でもひっかけたのだろう、それか何人もいる恋人に会いにいくところなのか……



(幸い私服でローブを被り、騎士団の使用人とはバレないはず?気づくその執念が気色悪くて、鳥肌が立つ)



…となれば、バトル開始である。



「恐れ入ります。人違いかと存じます。わたくしはしがない平民でございます。御令息様のような高貴な方とお知り合いとは、いかに高貴なお方なのでしょうか」

(あっかんべー、帰れ、この浮気男)

と心の中で舌を出す。



「おっ?そうか?………

いや?やはり、お前、ミーナじゃないか?ふざけるな!お前のせいで何もかも上手くいかなくなったんだ!まずは、ちょっとこっちに来い!!」



人の往来が増えて来たからか、クソ男は私の手首を掴み強引に人気ひとけの無い路地裏に私を引き込もうとしてきた。

(手首、い、痛い!振り払えないっっ!)



……その時



「何をしている?」

声と同時に、カーティスの手を捻りあげ、私を守るように誰がカーティスの前に立ちはだかってくれた。

(よかった!!ホッ。この声は………)



「中央騎士団2番隊隊長、ライグル・ヴァーレンだ。嫌がる女性を無理矢理連れて行くのは、重大な罪になるが?」



(まさか、た、隊長?)



隊長は、鋭く威圧する空気を含んだ声で告げ、剣の鞘に手をかけるそぶりをした。



(抜刀?!しちゃう?サビになるのももったいないクズ男だけど!!)

脳内でツッコミできるほど、落ち着いてきた私は、単にさすが隊長!と納得していた



一方カーティスは、隊長の登場で明らかに狼狽うろたえていた。

(コイツ……《銀閃の騎士》、って呼ばれてるらしいあれか?一閃のきらめきで全てを斬る速さかつ最強...と噂の...まさかな...)



人の往来が多く、さすがのカーティスも、これ以上騒ぎを起こし注文を集めたくないと思ったのか



「まさか?人違いかだったみたいだし?」

(ニヤついてこっちを見るな!)



と行って、街にきえていった。



そして、私の手首を一瞥した隊長が

「チッ……」

(今舌打ちが聞こえたような?まさか隊長さん?…すみません、私が不甲斐ないばかりに、こんなクズに付き合わせて…)



やばい、この冷たい空気をなんとかしなければ…と前世の社会人スキルを発動し、精一杯会話を繋ぐ。



「…隊長さんですよね?騎士団寮の厨房で働かせていただいていますミーナです。危ないところを助けていただきありがとうございます。このお礼は必ず。本当にありがとうございました。」

(銀髪に銀の瞳、この前会った隊長さん…だよね?)



「いや、巡回中で、当然のことだ。気にするな」



「……(どうしよう?そう言われても…食堂に来た時、好きなおかずを山盛りしてあげる?そもそも団長は食堂に来るのかしら?えぇと…)

頭の中でどうお返事すべきか考えあぐねていると……



「…ライグル。」




「へっ!?」

(ん?なんで名前?)



「隊長だと何番隊の隊長かわかりにくい。……ライグルと呼んでくれないか?」

そう言った彼のまつ毛が、ほんのわずかに震えていた。



なぜか、頭に垂れ耳が見えて、くぅぅーんとわんこの鳴き声まで聞こえるのは幻聴だろうか。



無表情クール系イケメンの、かわいい表情に、不覚にも心の中で鼻血が出そうだ。心なしが耳が赤いような?



いやいや、たぶん女性と喋り慣れてないからだろう。貧相な私にそんなはずはない。私は心の鼻血を止めて、一瞬で平常心に戻った。



「ライグル……様?」

(何が正解なの?汗 これなら自然?)


片手で、顔を覆い下を向いてしまった隊長が心配で



「隊長さん?」

と呼びかけても反応しない


「ライグル様?」

??!

まさか………



「ライグルさん?」



「あ、あぁ」

その瞬間、隊長もといライグルさんは、バッと顔を戻した。



(一瞬、瞳が金色になってた?気がしたけど…気のせいよね?………隊長さんてめんどくさい人なのかもしれん……うん、とにかく帰ろう)



そうだ!ライグルさんに道を聞こうと思ったら…



「隊長〜、ナンパですか〜?昼間っからイイ雰囲気じゃないっすか?」

ジュリオがやってきた。

(あ、チャラ男……前も騎士団で見かけた……ジュリオさんだ)



「……からかうな。俺は本気だ」

(ん???何に?今聞いちゃいけないことを聞いてしまったような...)



「あれ?でもその子、隊長に“ライグルさん〜”って、三段活用で呼びかけてませんでした?」




「その子じゃない。ミーナ、だ。」

低い声で、ジュリオに釘を刺す。

(??!不穏な言葉が、聴こえたような?ミーナは聞こえないふりをした。)



「いや...その子だ。」



「....(ぶほっ)はいはい、ライグル、わかったよ」




「ち、違いますっ!違いますよ!? あの、お名前...それ

はその……何が正しいのか分からなくて……!」




居た堪れない………どうしよう……

そんな時、セリアさんが、人混みをかき分けて駆け寄って来てくれた。



「ミーナっ!無事だった?ごめんね、私、完全に見失って……!」

息を切らしながら、心底心配そうな表情に私は、なんだかホッとしてしまった。



「いえっ、大丈夫です!セリアさんも無事でよかった……! えっと、その、少し変な人に絡まれて……」




「……誰よそいつ」

(一段低い声になるセリアさんの絶対零度、なんか嬉しい…)



「セリアちゃん、そいつは隊長が撃退したから、大丈夫っすよ。普段寡黙なのに、スイッチ入るとマジ容赦ない。こえーっ。」



「あいつはミーナの知り合いか?人違いかだろうか?」



「…はい。人違いかと…」



「そ、そうか。」

(あの髪色、顔は確か見覚えがある…。こいつも調べる必要がありそうだな)



「えっ……!?ミーナ、その手首……あざになってるじゃない!どうしたの?!」



「す、少しだけ……もう平気です。多分」



それを見たライグルは

「…大丈夫ではない」



無言でミーナの荷物に手を伸ばし、ひょいと持ち上げる。



「えっ、あの、隊長……ライグルさん?荷物なら自分で持てますから!」



「……重い」



「……はい?」



「怪我人が無理をするな。……俺が持つ」

(この人、平然とイケメンムーブ入れてくる!天然なのか世間知らずなのかしら…まぁ、皆に親切な、騎士道精神ってやつよねぇ)



「じゃ、セリアちゃんの荷物はオレが持つねー。乙女に重労働は似合わないからさ!」



「……余計な口きかずに運んで」

セリアさんは呆れて顔だ






(寮まで護衛兼ねて4人で帰る道中――わちゃわちゃした空気と対照的に、ライグルはミーナをそっと気にかけている)




騎士団寮につくと


「ミーナ?こっちへ」

(こっちってどこ?)



示されたその先には医務室があった。


「えっ、あの……?」

(勝手に入っていいの?)



「医務官はいないようだ。俺が処置する」



「えっ、あ、いえ、そこまでしていただかなくても……!」

(しょ、処置って……!)



私を椅子に座らせ、ライグルは片膝を付き、座り込んだ。私の手を取り、瞳を見つめながら…

「……沁みるかもしれない」



塗り薬を手に取り、ミーナの手首に塗ろうとする。その手つきは、まるで壊れものを扱うように優しく…



不覚にもドキドキしてしまった私は

「じ、自分でやります!」

と叫んでしまった。



「フッ、大丈夫。俺がやるほうが速いから。」と行って薬を塗り、包帯を巻いてくれた。


(い,今、笑った!??んーーーーー!!供給過多で鼻血が出そうだ)


(この人……こんなに丁寧に触れるんだ……なんだか熱い……)


(包帯を巻くのが上手いてことは、それだけ怪我に慣れているてことよね……)



処置が終わると、ライグルさんは、さっと立ち上がり、扉の方へ向かった。




「……怪我が癒えるまで無理はするな」



「……誰にも、こんなことをさせるなよ。俺がするから。少し休んでから行くといい」

「.......そ、その髪型と服....よく似合ってる」



「……はい。ありがとうございます、ラ、ライグルさん……」

(やばい、たぶん顔も耳も赤い…ライグルさんの顔が見れない)



ライグルは小さくうなずいて、去っていく。



ふぅーーーー、何あれ!?

普段クールなイケメンの微笑…いただいちゃいました。破壊力がとんでもなく。しかも最後に爆弾を落とすという...



ドキドキと顔の赤みが落ち着いてから、私は医務室を出た。



医務室の扉を出た瞬間――ジュリオがひょっこり現れりる。(こいつ全部聞いてたな?恥)




「な、なんでいるんですかー!!??」

私はまた顔を戻した赤くして叫んだのであった。



「ふっふっふ……俺って優秀だからね」 

ウインクを飛ばしながらのいつもの軽口に、私は安心した。



部屋に帰ってから、

「なんであんなにドキドキしたんだろう…」

と今日の出来事を思い出し、私は赤面してベットに突っ伏した。

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