第五話 – 「レジスタンスとの接触」
第五話 – 「レジスタンスとの接触」
井上が警察から逃げ、ようやく辿り着いたのは、レジスタンスの隠れ家だった。これまでの緊張から解放されたような気分に一瞬なったが、すぐにそれがただの一時的なものだと感じた。隠れ家は決して安心できる場所ではない。どこにいても警察の追跡の手は伸びているし、レジスタンスの本拠地もまた、命をかけた戦いの場となることは確実だった。
「これがレジスタンスの基地か…。」
井上は周囲を見回しながら呟いた。基地は地下のような場所に隠されていて、狭い廊下が延び、薄暗い灯りが点々と光っていた。誰もが警戒心を持ちながら、静かに行動している様子だった。井上はその中で、自分が何をすべきかを考えていた。セカンドコードを学び、フォネティックコード警察に立ち向かうために、この場所に足を踏み入れたのだ。しかし、その道のりは決して簡単ではないことを、井上は痛感していた。
「ようこそ、井上。」
突然、低い声で誰かが声をかけてきた。振り向くと、そこに立っていたのは、年齢不詳の中年の男だった。目つきは鋭く、まるで戦場で生き抜いてきたような雰囲気を醸し出している。
「あなたが…?」
井上は少し驚いた表情で尋ねる。男はただうなずき、無言で井上に歩み寄った。
「私はレジスタンスの一員だ。」男は短く言った。「君がこの世界で生き抜くためには、セカンドコードを使いこなす必要がある。それが私たちの唯一の手段だ。」
「セカンドコード…。」
井上はその言葉に一瞬動揺を見せた。レジスタンスが求めるセカンドコード、それがこの世界を変える力だという。しかし、井上はその力に対して不安を抱えていた。セカンドコードは確かに強力だが、それに依存することが本当に正しいのだろうか。自分が望むべき未来がそこにあるのか、井上にはまだわからないことが多すぎた。
「君がセカンドコードを使うことで、この抑圧された世界を変える力を得る。それがレジスタンスの目指す世界だ。」男は続けて言った。「だが、それだけでは終わらない。君には別の力が必要だ。」
「別の力…?」
井上はその言葉に反応した。セカンドコードだけでは足りないと? もし、セカンドコードを学べば、それで警察に立ち向かえると思っていた自分の考えは、果たして正しいのだろうか。
男はさらに言葉を続けた。「セカンドコードを使いこなせる者は少ない。しかし、力を得るには訓練が必要だ。君にはそのための試練を受けてもらう。」
「試練…。」
井上は心の中で反発を感じる一方で、その試練を乗り越えなければ前に進めないことも理解していた。だが、何度も警察から逃げ続ける日々が、井上の心には疲れをもたらしていた。彼は、自分がどこに向かっているのかを見失いそうになっていた。
「君がレジスタンスと共に戦う覚悟があるなら、試練を受けるべきだ。」男は冷静に言った。「その先に、君が求める答えが待っているはずだ。」
井上はしばらく黙って考え込んだ。そして、深呼吸をしてから、男に向かって言った。
「わかりました。試練を受けます。でも、セカンドコードだけで終わりたくない。私は、この世界を変えるために戦いたい。セカンドコードに頼らずに、もっと大きな力を手に入れたいんです。」
男はしばらく井上を見つめてから、軽くうなずいた。
「君のその意気込みがあれば、試練も乗り越えられるだろう。だが、注意しろ。セカンドコードの力は強力だが、使い方を間違えれば、かえって敵の思うツボだ。君がどこまでその力を信じ、制御できるかが、これからの鍵だ。」
「わかっています。」
井上はその言葉を胸に、試練を受ける覚悟を決めた。そして、レジスタンスの仲間として新たな一歩を踏み出すことを誓った。だが、彼が学ぶべき力は、単なる言葉の力にとどまらず、さらに深いところに存在していることを、井上はまだ知らなかった。