第四話 – 「警察の追跡」
第四話 – 「警察の追跡」
井上はレジスタンスの一員となり、セカンドコードを学ぶための道を歩み始めた。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。レジスタンスの隠れ家に向かう途中、井上は何度も足を止めては周囲に警戒を強めることになった。彼の心の中には常に不安が渦巻いていた。フォネティックコード警察が自分を追っているかもしれないという恐怖が、頭から離れなかった。
「井上、少し落ち着け。警察の目が届かない場所に向かっているんだ。」
男は井上に向かって冷静に言ったが、その言葉も井上の不安を完全に消し去ることはできなかった。警察が常に監視しているこの世界で、ほんの少しでも気を抜けば命取りになる。井上は今、まさにその「ほんの少し」のリスクを抱えているような気がしていた。
「でも、警察は…どうして俺に気づいたんだ?」
井上は男に問いかけた。自分が矯正区に入ってから、警察に目をつけられたことは確かだった。レジスタンスと接触したことが警察に知られるのは時間の問題だと思っていたが、こんなにも早く追ってこられるとは思っていなかった。
男は少し間をおいてから答えた。
「警察はお前が『違和感』を持っていることを察知したんだ。」男は続けた。「お前のように、言葉に対する反発心を持っている者は、目立つんだ。少しでも普通の言葉使いから外れるだけで、警察はその兆しを見逃さない。」
その言葉を聞いて、井上は改めて自分の立場を認識した。自分が常に警察の監視下に置かれ、どんな小さな間違いも見逃されることなく追及される世界で生きているのだという現実に、改めて恐怖を覚えた。
しかし、男の言葉に耳を傾けると、井上の中で少しずつ冷静さが戻り始めた。警察は確かに手強い相手だが、彼の目の前にはレジスタンスがいる。そして、セカンドコードを使う力を手に入れれば、この支配から脱出することができるかもしれないのだ。
「ここから先は、さらに警戒を強めろ。」男が警告した。「警察の監視は厳しくなっている。レジスタンスの隠れ家も、そう長くは保たないだろう。」
その言葉に井上は再び心を引き締めた。今、彼の目的はただ一つ。セカンドコードを学び、警察の支配から抜け出すことだ。それだけが、彼にとっての希望であり、未来への唯一の道だった。
しばらくして、二人は密かに進んでいたが、突然、前方から警察の車両の音が聞こえてきた。井上は一瞬で血の気が引いた。あの車両は、まさしくフォネティックコード警察のものだった。
「まずい、早く隠れろ!」男は井上を急かし、近くの路地に飛び込むように指示した。
井上は息を呑みながら、指示通りに駆け込んだ。背後から警察の車両の音が近づく。心臓が激しく鼓動し、思わず足音を殺すように歩を速めた。
路地の中で息を潜め、井上はひたすらその音が遠ざかるのを待った。数分後、ようやく車両の音が遠ざかり、井上は息をついた。
「助かった…。」
男もまた、井上を見守るようにして深く息を吐いた。
「警察の追跡はすぐにかかる。だが、レジスタンスに加わる以上、こういうことはこれから何度も繰り返されることになる。」
井上はしばらく黙っていたが、男の言葉をしっかりと受け止めた。これが今後の生活の一部となるのだ。警察の監視を避け、隠れることを強いられ続ける日々。それでも、彼はレジスタンスと共に進む決意を固めていた。
男は井上をじっと見つめ、口を開いた。
「行こう、隠れ家まであと少しだ。セカンドコードを学ぶことで、お前にも力がつく。だが、それだけでは足りない。お前はもっと強くならなければならない。」
「強く…?」井上は思わず尋ねた。
男はにやりと笑うと、言った。
「そうだ。セカンドコードを操る力を持つ者でも、それだけでは警察を倒せない。お前に必要なのは、もっと大きな力だ。」
その言葉に、井上は心の中で新たな決意を固めた。セカンドコードを学ぶことだけでは終わらない。彼は、もっと強い力を手に入れ、警察と戦わなければならないのだ。
その時、井上はふと思った。自分の中で目覚めつつある力、それこそが「強さ」なのだろうか。それとも、これから新たに見つけ出す力が必要なのだろうか。
ともあれ、井上は迷いを振り切り、再び歩き出した。これから待ち受ける試練に立ち向かうため、彼の心はますます固くなっていった。