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第一話 – 「転生と覚醒」

第一話 – 「転生と覚醒」


井上は目を覚ましたとき、自分がどこにいるのか全くわからなかった。体を動かすと、見慣れた自分の部屋ではないことに気づく。天井は異常に高く、周囲の壁は不安定な石造りのように見えた。目の前には重い鉄製の扉があった。冷たい空気が漂い、異常なほど静まり返った空間に圧倒されながら、井上は立ち上がった。


「ここは…どこだ?」


声を出しても、響くのは自分の声だけだ。それもおかしな気がした。あれ、さっきまで自分の部屋にいたはずじゃ…?


ふと、井上は自分がどれほど無力だったかを思い出す。引きこもりだった自分。自分を世間から閉じ込めていた。いつもネットの世界に逃げ、現実から目を背けてきた日々。だが、今、目の前に広がるこの奇妙な世界に、自分はどうやってここに来たのかさっぱりわからなかった。


「あれ?体も…前と違う…?」


井上は自分の体を見下ろす。以前よりも健康そうに見える。しかし、その変化も何かおかしい。顔や手に見覚えがなく、まるで別の人間のようだった。


その時、扉の向こうからガタガタという音が聞こえてきた。井上は慌てて背を向け、扉に耳を澄ます。


「誰か来る?」


不安が募る中、扉が静かに開き、入ってきたのは制服姿の二人組だった。彼らは鋭い眼差しで井上を見つめ、無言で歩み寄ってきた。


「おい、そこに立っていろ。」


命令のような言葉が投げかけられる。井上は言われるままに立ち尽くした。何も知らない自分に、彼らは冷徹な目を向けてきた。


「君、発音に問題があるようだな。」


一人がそう呟き、もう一人がポケットから何かを取り出した。それは、井上が見たことのない機械のようなものだった。細長い筒のような形をしており、端に小さなスクリーンがついている。


「発音を確認する。」


その言葉を聞いた瞬間、井上は胸騒ぎを覚えた。心臓が激しく鳴り、何かが胸を締めつけるような感覚を覚える。


「お前は、コードを間違えたな。」


「コード…?」


井上はその言葉の意味が分からなかった。突然のことで頭が混乱していたが、その直後、機械が画面に表示された言葉を読み上げる。


「アルファ、ブラボー、チャーリー。」


「ちょっと待って!それ、何のことだ?」井上は慌てて問いかけた。


しかし、警察官の一人は冷たい目を向ける。


「間違った発音をすることは、この国では許されない。君は発音誤認による違反者だ。連れて行け。」


「え?いや、ちょっと待って!」


井上はその場から逃げようとしたが、警官たちは容赦なく彼を捕まえ、硬い手錠で縛り上げた。


「フォネティックコード警察へようこそ。」と、冷酷な声が響いた。


井上はそのまま引きずられていく。意味が分からないまま、目の前に広がる異様な光景にただ圧倒されていた。フォネティックコード警察という言葉が脳裏に浮かぶ。だが、何も理解できない。ただ、怖かった。自分がどこにいるのか、そしてこれからどうなるのか…。


警官たちに連れられ、井上は建物の中に入る。そこには、見たことのない部屋が広がっていた。壁にいくつかの大きなスクリーンが取り付けられ、人々が座っているのが見えた。すべての人々が、無表情でスクリーンに向かっていた。


「ここは…?」


「ここは、矯正区だ。」


警官の一人が無情に言った。


井上は呆然としながらも、矯正区という言葉に恐怖を覚えた。何か恐ろしいことが待っているのだろうか?


そのとき、警官が井上の耳元でささやいた。


「言葉を間違えた者は、罰を受けるべきだ。君も間違えた。」


井上はその言葉に打ちのめされた。自分がどうしてここにいるのか分からない、ただただ恐ろしい現実が待ち構えているように感じた。次に何が起こるのか、全く予想ができなかったが、この圧倒的な支配が自分を包み込んでいることを感じ取っていた。

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