表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第9話

「逃げろ!」


 血と言葉を一緒に吐くシヴァンの目が、一点を指す。はっとしたニーナが、呆然とするカノウの腕を引き、隠し扉へ開け飛び込む。駆け寄ろうとするジュードの腕をシヴァンが強く歯を立て噛んだ。ジュードは顔をしかめ、シヴァンを床に叩きつけて壁に投げた。ネオン管が落ちて破裂する。ジュードの手が隠し扉に届く一瞬前に、外から錠がかかった。


 転がるようにカノウとニーナは階段を落ちていく。上の方で男たちが争う激しい声と物音が響いた。

 月光も街灯も、階下の闇を照らしていなかった。



「ああ……俺の、俺の」

 引きずられた先で、カノウはうわごとを繰り返しながら、へたり込んだ。手足がひどく脱力している。ニーナの膝は、砂と血が混じり汚れていた。

「リーダーでしょ!!ちゃんとしろ!!」

 ニーナがカノウの頬を平手で張った。


「考えろ!!!!


 シヴァンと仲間を!」

 震える手でカノウはスマホを取り出した。

「……シヴァン」

 闇の底が照らされる。

「ごめん」


 ほの昏く、カノウの黒目が覚悟で染まった。

 密かに用意しておいたリモートアクセスのルートは、まだ塞がれていなかった。

 彼は、いま最も意味をもつコードを打った。


 pvar_nuke --all --recursive --confirm="D3STR0Y"


 その瞬間、

 秘密基地が、

 通学路が、

 学校が、

 校庭が、

 桜並木が、

 故郷が、

 幼馴染が、

 後輩が、

 家族が、

 恋人が、

 ――すべての楽園が、爆散した。


 ユーザーの周りに派手な爆炎のエフェクトが広がり、大切なものが砕け散り、ポリゴンが吹き飛ぶ。証拠の強制削除。それは、警官たちがローカルのpvarファイルをコピーしはじめる直前のことだった。

 そして、画面にはただ文言が残った。


 NOT FOUND


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ