第22話②シーズン最終戦
いよいよ最終戦キックオフ直前のロッカールームではいつものようにハドルが組まれていた。
浜田が「WE AREー!」」
田﨑が「BLUE!」
全員で、「WINGS!!!」
と掛け声を合わせた。
いつものように花道を通り抜けブルーウイングスの選手たちはグランドに駆け出して行った。
本日の相手はホワイトパンサーズだ。
合宿の練習試合では1点差を死守し何とか勝てた相手だった。
ホワイトパンサーズのキックオフで始まった試合は、開始早々に動いた。
ブルーウイングスはホワイトパンサーズがラインアウトからアタックを開始したが、パスをインターセプトし、そのまま50m以上を独走してインゴールへと持ち込みトライ。スタンドオフの田村のコンバージョンキックも決まり、7対0とした。
あっという間の出来事だった。
さらにブルーウイングスはキックリカバリーから
大外へとパスをつなぎ北村がトライ。
田村のコンバージョンキックも決まり14対0と点差を広げた。
しかしホワイトパンサーズも一筋縄ではいかない相手である。
敵陣深い位置でのスクラムから、フォワードで押し込み前進し、最後はバックスへと展開し、(フルバックがトライを決めた。
反撃の開始だった。
前半はシーソーゲームとなり、得点の取り合いとなった。
結果として20-12とリードを広げ、後半へと折り返した。
後半は空気が変わりホワイトパンサーズが試合の主導権を得た。
ブルーウイングスの秋野が危険なタックルによりシンビンのため10分間は14人で闘わなければならなくなった。
それでもブルーウイングスはペナルティゴールで加点した。しかしホワイトパンサーズは相手のシンビンで数的有利を活かして、スクラムからパスをつないでトライを決めると、コンバージョンキックは失敗したが、23-17と追撃態勢に入った。
勢いを味方に付けたホワイトパンサーズは
自陣で攻撃を開始すると、守備網を突破したスクラムハーフがトライを決めると、コンバージョンキックも決まり23-24と逆転された。
そしてそのまま更にトライを重ね、
23対29と点差を広げられた。
苦境に立たされたブルーウイングスも必死に食い下がっていたが、なかなかチャンスを掴むことができず時間は過ぎていった。
我慢のラグビーが続くなか試合終了まで残り2分。
ホワイトパンサーズのスタンドオフから右を走るフルバックへパスを送ったが、受け手になるはずだったフルバックの選手が視界から消えていた。まさかの転倒だった。好機とブルーウイングスのターンオーバーが生まれ、最後は田﨑のトライが決まった。一点差の28対29となった。
ここで試合終了のホイッスルか鳴った。
コンバージョンキック終了と同時に試合が終了となる。
この場を託されたのは田村だった。
田村が蹴ったボールはまっすぐゴールに向かって飛んだように見えたが、わずかにずれていてゴールポストにぶつかった。
ぶつかったボールはゴールポストの外側に逸れてしまった。
ホワイトパンサーズはこの瞬間にリーグ昇格が決まり喜びを爆発させた。
その様子を見て田村は座り込んでしまった。
田﨑は田村の手を引っ張り立ち上がらせた。
「間違えても自分の責任とか思うなよ」
田村の性格を考えると自責から立ち直れなくなることを懸念した。
田村は
「やっぱり悔しいですね」
と言いながら、なぜか清々しい顔をしていた。
「自分が試合に出て負ける悔しさはいいですね。次の試合までに自分は変えられるので」
試合に出られない時は、負けても何もできなかった歯痒さを思い出していたのだろう。
「次は絶対に勝ちましょう」