第20話③シーズン第2戦
キックオフの笛とともに、両チームの選手が走り出した。
試合は相手チームが先制した。
そのまま何度かチャンスを迎えたがブルーウイングスは攻め切ることができず前半は相手チームの7点先制のままで終えた。
ブルーウイングスは後半田﨑の連続トライで12対7と逆転した。
しかし、またあっさりと逆転されてしまい、12対14とブルーウイングスは2点を追う展開に戻った。
そのまま後半15分が経過した時、
選手交代の案内が電光掲示板に映され、観客席から今日1番の大きな歓声が上がった。
歓声に背中を押され田村が走り出した。
しかし展開はすぐには変わらず、自陣のゴールを背にした苦しい戦いが続いていた。
悪い流れを断ち切ったのは田村だった。
田村の確実なタッチキックにより相手陣地の深くまで戻すことができた。
そこでの攻防により相手からペナルティを奪った。再び田村のタッチキックにより、さらに自陣を進めた。
投げ入れられたボールをロックの若色がキャッチした時点で残り時間は1分を切っていた。
そこから怒涛の攻撃が始まった。FWがしっかりボールをキープしながら、相手に身体を当て、前進する。プロップの川島が突っ込んだときに試合終了のホイッスルが鳴った。
しかしその後、グランドにいる全員、誰もがひたむきに前進を続けた。キャプテンの浜田が誰よりも素早く駆け寄り、まるで機械のような正確性でボールを回し続けた。
すでに試合時間は85分を経過していた。
重ねたフェイズは28。幾度となくブルーウイングスの選手たちの間をボールは行き来した。
全員の想いがこもったボールを田村がインゴールに蹴り込んだ。
田村はボールをしっかりと目で追いながら力の限り叫んだ。
「いけぇーーーーー!」
既にスタートを切っていたフルバックの田﨑が難しいバウンドをしっかりと胸に収めそのままトライを決めた。
スタジアムは絶体絶命のピンチからドラマのような逆転劇に歓喜した。
17対14となった。
難しい位置だったが田村が美しいフォームでコンバージョンキックを決め、19対14で試合を終えた。
以前の田村はイチかバチかの勝負はしなかった。
しかし冷静に周囲を見て、田﨑のスペースを確認していた。
そこで田﨑を信じてボールを蹴った。
キックが逸れるか相手がキャッチすれば、その時点で試合が終了し敗戦が確定する。
その勝負。それを生み出したのは間違いなく全員の信頼感だった。
もちろんバックスの活躍だけではない。28フェイズにわたる攻撃をミスなく繋ぎ続けたフォワードの集中力も凄まじいものがあった。
まさに死闘だった。
最後勝敗を決めたのは、田村のファーストキャップを敗戦にはしない。というブルーウイングスの勝ちへの執念が相手より少し上回ったことかもしれない。
田村は涙を拭うこともしないで観客席に頭を下げ続けた。