第2話②桜庭敦志
ミーティング後に、
田﨑は気の合う仲間達と割烹東に来ている。
東の大将は無類のラグビー好きで
試合にもよく応援に来てくれている。
試合がある日はお店が休みなのは常連の間では有名な話である。
しかし、普段は練習後にはどれだけ遅くなっても、いつも栄養を考えたメニューをたくさん準備して選手達を待っててくれている。
東はブルーウイングの選手達にとって管理栄養士のような存在だ。
田﨑たちは今日も卵を14個使用する自慢のだし巻き卵をつまみながら、ミーティングの話をしていた。
「そういや、田﨑急にスローガンとか言い出してどうしたんだよ」
同期の北村がからかうように言った。
「注目を浴びない中で試合するより、
期待されて試合した方が俺たちも頑張れるだろ。
会社でも応援されたいって考えたんだよ。
やっぱりファンが増えた方がいいと思うだろ」
田﨑は答えた。
「大学選手権の決勝はすごかったな。
俺は観客席だったけど。
あの歓声の中、田﨑のプレイはすごかったな。
見ていて鳥肌がたったよ。」
笑いながら北村は言った。
「とりあえずさ、田﨑の想いは少なからずみんな思っていることだと思うからさ、やれること考えてやってみるよ」
と、ベテランでチームの精神的支柱の川本が言った。
川本にお礼を言いながら、
田﨑は今日のミーティングで気になったことを川本に聞いた。
「桜庭さん何かあったんですか?」
「桜庭さんどうしたの?何かあったの?
なに?なに?」
空気も雰囲気も読まない北村が聞いた。
川本は北村を相手にしないで答えた。
「この前、更衣室で桜庭のことをさ、『ファンサービスファンサービスって言ってるけど、ファンにとっては試合に出ることが1番のサービスだよな。』って若色達が笑いながら言ってたんだよ。たまたま俺も聞こえたから若色達の所に話に行こうとしたら、入口に桜庭が立っていてさ。
多分若色達の話を聞いて、試合に出られない自分なりのチームとの関わり方を否定された気持ちになったんだろうな」
田﨑は川本の話を聞いて桜庭の気持ちを考え、憂鬱な気持ちになり、ビールを一気に飲み干した。