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第19話②田村拓人

一息ついたところ田﨑が聞いた。


「最近練習中、どうしたんだ?」


「何がですか?」


「ぼーっとしてる時ない?」


「バレちゃってるんですね」


「10年の付き合いだからさすがにちょっと変だな。って気づくよ」


「最近色々考え事があって

ついつい練習中も考えてしまう時があるんですよ」


「拓人らしくないじゃん。

練習の鬼なのに、、、どうした?

言えればでいいけど」


「僕、経理の仕事をしていると、毎年すごい金額を中村建設がブルーウイングスのチーム運営の欠損金を補てんしているんですよ。

それはもう凄まじい額です。」


「へぇ、、、お金のことなんか考えたことなかったな」


「欠損金って赤字ということなんで、普通の企業ならすぐに倒産してしまう額を毎年親会社からもらっていて、チーム運営を続けているんですよ」


「自分たちだけじゃチームを運営できないってこと?」


「そうですね」


「それでなんで、拓人が練習中も考えちゃってるの?」


「引退して、仕事に専念しよかと思って」


「はあ?」

突然の返答に田﨑は思わず大声を出していた。


「チームが自分にかけているお金って、ユニフォーム貸与、合宿、毎日のお弁当とか色々で結構高額なんですよ」


「それは分かったけど、それが引退に結びつけるんたよ」


「僕は試合にも出られないから実質チームの期待する役割に応えられていないんですよ。

仕事しない人をチームに置くことができる状態にないんですよ」


「だからって」


「僕にかけている費用が減れば欠損金も減るし、試合に出られる人に費用をかけられてチームのためになるんですよ」


「そんな田村の犠牲をチームは望むと思うのか?」


「それは分からないですけど、試合に出られない僕がラグビー続けたいって自分のワガママだけでお荷物になっているのに気が付いちゃったので」


「そんな、、、」

言葉を失う田﨑に向けて田村は続けた。


「だとしたら早い方がいいと思うんですけどって悩んでいる間にシーズン始まっちゃって。

さらにいつ引退を伝えようかをまた悩んでいます」


「迷うってことは続けたいんじゃないのか」


「それは未練だらけですよ。

ただ足手まどいになりたくないんですよ」


田村は昔から真面目で頑固な奴だった。


「とりあえず、勝手に言わないでくれよ」


情けないことに田﨑は引き止める言葉が出てこなかった。

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