第18話⑥シーズン開幕戦
田﨑はインタビューを終えてからすぐにファンのもとに向かった。
試合後の余韻を楽しむファンが多く残るイベント会場に選手数名で行き、帰るファンの方一人ひとりに感謝の言葉を伝えた。
突然現れた選手たちにファンの間から歓声があがった。
春山が誘って来場してくれた取引先の方々の輪の中に行き、春山とともに丁寧に感謝を伝えた。
「今日はお越しいただきありがとうございました」
「春山さんとは長い付き合いでね。
若い頃にはよくラグビーに誘ってくれていたんだけど、いつからか私が断るようになってね。
そのうちにお誘いがすっかりなくなっていたんだよ」
「いくら誘ってもゴルフばっかりで。
まあ、私もラグビーから遠ざかっていたんですけどね」
春山は笑いながら話した。
「今日は春山さんがどうしても来て欲しい。
ラグビーを見ながら若い頃の話をしましょうよ。
って何度も誘ってくれたんだよ。
いやー楽しかった。
君たちを見ていたら久しぶりに青臭く夢を語った頃を思い出したよ。
つまずきだらけだけど、前だけ向いていた頃を」
「ありがとうございます」
田崎は頭を下げた。
「また春山さんと挑戦を始めるよ。
こちらこそありがとう。
ラグビーは楽しいな。またシーズン中に観に寄らせてもらうな」
手を降りながらお客様はスタジアムを後にした。
「春山さんありがとうございます」
「いや、営業のためだから」
と照れ臭そうに春山は言った後に、
「実際のところ、俺だけじゃなく若手の営業まで受注見込みの数字を上げてきたから、営業部長としては大成功だな」
豪快に笑った。
「ありがとうな。またイベントを実施させてくれよな。
今日は良い試合だったよ。お疲れ」
田﨑の肩をぽんぽんと2回叩いて春山も取引先の方々を追ってスタジアムを後にした。