第18話①シーズン開幕
12時キックオフにも関わらず、
運営スタッフやノンメンバーはまだ暗いうちに集合し、会場設営を始めた。
メンバーに混ざって経営企画の松戸やVR開発部隊も準備を行っていた。
松戸は、経営企画で会社のプレゼンス向上のため
社のVR技術をもっと売り出す方法を提案し、その一環でラグビーの臨場感が感じられるVRを作成し、それをチームが使用することを認めてくれていた。
ついにファンの方への初お披露目が今日だった。
経営企画、開発部隊をあげてのプロジェクトでもあるので準備に余念がなかった。
準備からSNSに投稿したいと、今や準チーム広報のかとうも早朝からスタンバイしていた。
以前試合風景撮影の際にブルーウイングスのファンのあだ名である「鳥友」になった、かとうに松戸は声をかけた。
「かとうさん!今少しお時間ありますか?」
「松戸さん!おはようございます。
大丈夫ですよ」
「以前撮影したVRが完成して今からテストするんですけど体験していただけますか」
「いいんですか?やってみたいです!」
「ありがとうございます。ぜひぜひよろしくお願いします」
かとうはブルーウイングスのメンバーと並んでファンの人が作った花道を通りグランドに駆け出た。特に熱心なファンの「かとう」にはハイタッチまでして走って行った。
試合中は「かとう」の声に励まされ続けた。
試合後は観客席で見守る「かとう」に手を振った。
VRを体験したかとうの感想は、
「微妙ですね」
自信を持っていた松戸は思いがけない感想に驚いた。
「リアル過ぎるので、僕が色々な所に現れて、幽体離脱した気持ちになっちゃうので、微妙な気持ちです」
笑いながら話をした。
「ただこのVRにはファンにとっての夢がこれでもかってくらい詰め込まられています。
最高ですね。
推しと一緒に試合に出られる夢を叶えてもらいました」
最高だ、、、と呟きながら、
VR体験記をSNSにアップするため、かとうはその場を離れた。