第18話④シーズン開幕直前
真剣な顔でパソコンを見ている髙橋を見つけた田﨑は声をかけた。
「髙橋さん。遅くまでお疲れ様です」
パソコンから顔をあげて、田﨑を見つけた髙橋は表情を崩した。
「田﨑もお疲れ。明日のために早く帰ってしっかり休めよ」
「はい。ありがとうございます」
「髙橋さんは何をしているんですか」
「うちのチームのペナルティ対策はしっかりできたんだけどさ。
相手のペナルティも警戒しなきゃいけないから」
髙橋の言っている意味が分からず、田﨑は言った。
「相手のペナルティは大歓迎じゃないですか」
「相手のプレイで選手が怪我をすることもあるから、プレイがラフな選手や危険なプレイが起こりやすい状況を分析しておきたくてさ」
「レフリーはそんなことまでするんですか」
「分からないけど、怪我をするリスクを1パーセントでも俺は減らしたいから」
怪我で選手を引退することになった髙橋から、同じ思いを誰にもさせたくないという強い想いが伝わってきた。
田﨑は髙橋に深々と頭を下げ、力強く宣言した。
「明日は誰も怪我することなく、勝って試合を終えます」
髙橋は笑顔で答えた。
「期待しているからな」
2人は力強く握手を交わした。