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第17話①川本亮平

リーグ戦開幕が迫りつつあり、課題となっているフィジカルの強化のための練習が続いた。


川本はチーム最年長のベテランとして若手社員が文句を言う中で、過酷な練習を黙々とこなしていた。


周囲を引っ張らなくてはならないという強い意思で川本は長期間、自身の限界ギリギリまで追い込み、時に限界を超えてしまい病院に運ばれることも長い現役生活で数回あった。


長くスポーツの世界に身を置くものにとっては、常に更なる成長のために練習に取り組み、新しい自分を目指し続けなければならなかった。


川本の人並み外れた向上心が負荷と休息のバランスを壊してしまっている時がある。


川本は長く休息と回復が十分でないうちに次の負荷をかけることが慢性化する生活をしていた。


その結果、川本の身体は疲労がなかなか回復しなくなっていた。年齢のせいだと川本は考えていたため、年齢の衰えを補うために、さらに練習を増やしていた。


川本は自分の身体に違和感を感じるようになっていた。

合宿でのホワイトパンサーズとの試合を終えてから、何もしていない時に急に心拍数が上昇し、原因不明の筋肉痛に悩まされていたのだった。


違和感を感じながらも川本は練習を丁寧にこなす日々を送っていた。

ある日の練習後に川本は田﨑と割烹東に合宿のお礼に来ていた。


管理栄養士がいないブルーウイングスにとっては東の大将がなくてはならない存在だ。


リーグ戦のチケットや全選手のサインが入ったポスター、ユニフォームやグッズを持って来ていた。


カウンターに座り田﨑達は早速店内にポスターを貼る大将と話していた。


「最終日の新深川豆腐美味しかったです」


褒められてまんざらでもない表情で大将は、

「そうだろ。俺もびっくりしたよ。

今日も食べるか?」


「はい。食べたいです」

と笑顔で答える田﨑を満足そうに見て、

2人の前に小皿を出してくれた。


「できるまで、これつまんどいてよ」


と、こぼれネギトロを出してくれた。

もともと魚屋さんから大将の両親が始めたお店だから割烹東の海鮮は間違いがない。


ビールを飲みながら話していると、ドアが開き吉川が顔を覗かせた。


田﨑と川本に気がつき軽く手をあげながら、


「大将にお礼に行ってくれるって言ってたな。

お疲れさん」

と言いながらカウンターに並んで腰をかけた。


大将と軽く会話をしていると、新深川鍋が届けられた。


「歳を取ると温かくて優しい料理が沁みるんだよな。揚げ物とかあまり食べられなくなったよ」

吉川は自虐的につぶやいた。


川本は笑いながら

「俺もですよ。

食べ物の好みも変わりましたね。

あとは、歳のせいかなかなか疲れが回復しないんですよね」


「わかるよ。

前なら練習後に夜から飲みに行っても、

翌朝の練習は平気だったのに、

朝起きるのが辛くなってくるよな」


「吉川さんもでしたか」


なかなか年齢の話をすることができないので、

川本は理解者がいることが嬉しかったらしく

少し気が緩んだようだった。


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