第16話⑦千葉県富津合宿
合宿4日目の朝この日は千葉県にホームを持つ、海南商事ラグビー部ホワイトパンサーズとの練習試合が予定されていた。
ホワイトパンサーズは来シーズンからブルーウイングスが戦うラグビーリーグの3部に所属していて常に上位である。2部リーグとの入替戦ではなかなか勝てずにいるが、ブルーウイングスとは同等の力を持っているチームだ。
リーグ戦を占う大切な練習試合だ。
コイントスの結果、ブルーウイングスのキックオフで試合が始まった。
キャプテンの浜田が「WE ARE!」
新副キャプテンの田﨑が「BLUE!」
全員で、「WINGS!!!」
お決まりの掛け声で選手たちはグランドに散らばった。
なかなか一進一退でゲームが動かないまま、
前半25分、ホワイトパンサーズのゴール前でのペナルティからクイックスタートでボールを出し、相手が体制を整える前に、ブルーウイングスは共通の意志を持ち全員で攻撃の体制を整えトライを奪う。誰が走りこむか分からない攻撃にホワイトパンサーズは焦点を絞ることができなかった。
あっという間の出来事だった。
吉川は思わずガッツポーズを取るほど理想通りの全員ラグビーだった。
続いて相手のノックオンからチャンスを掴んだブルーウイングスは、相手陣で田﨑が冷静に周囲を見て裏へのキックを蹴り、若色がぴったりのタイミングで飛び込みボールをキャッチし、そのままボールを繋ぎ前半32分に2本目のトライを奪う。
昨日の練習では失敗したプレイだった。
しかし今日の田﨑は若色の位置、若色がディフェンスをかわし走り込める位置にいること、何より背後にフォローがいることを確認し、蹴っていた。
田崎は若色と抱き合い喜びを爆発させた。
そして吉川はまたガッツポーズを取っていた。
コンバージョンキックを2本とも成功させたので、14対0で前半を終了した。