第16話⑤千葉県富津合宿
午後再びビーチに集合したメンバーは、昨日ヘルメットジャンケンをした5人一組に別れて地元のビーチラグビーチームと対戦する。
5人はポジションを均等に分けることや、年齢層を分けることはしないで単純にくじ引きで分けられた即効のチームだった。
ビーチラグビーのルールは、ラグビーとアメリカンフットボールをミックスしたような5対5で行うスポーツで、ディフェンスのタッチを交わしながら、相手ゴールラインにボールを運んだらトライ。
トライまでに5回タッチされると攻守が交代する。
ラグビーとは違ってタックルやスクラムがなく、攻撃中には1度だけ前へパスができるというルールもある。
ラグビーと名はつくが全く違うスポーツだ。
試合時間が7分ハームであるため、ブルーウイングスのメンバーは舐めていた。
自分たちはいつも40分ハーフという過酷な試合を行っているので7分くらいあっという間だと考えていた。
また地元のラグビーチームにはラグビー経験者が少なく女性や見るからに高齢の方もいた。
体力的にもラグビーの技術的にも負ける訳はないという過信に溢れていた。
いざ試合が始まると、
グランドで俊足を誇り、ステップに自信がある田﨑たちも砂浜に足を取られて思うように動く事は出来なかった。
頭より先にタックルに体が動いてしまうが、
うまく体制を作ることができず、
砂浜に豪快に転んでしまうだけだった。
レフリーはどう見ても無様に転んでいるだけなので、タックルとは見られずペナルティを取られないことが救いだったが、それすら情けなかった。
タッチされた時に行う股下からのクウォータバックへの”素早い”パスに翻弄された。タッチし攻守が交代した瞬間に田﨑たちが気が付かないうちに、クォーターバックからレシーバーにボールが渡されており、田﨑たちのはるか背後にいてトライが量産された。
スピードがラグビーとは比にならなかった。
またラグビーにはないフロントパスも田﨑たちを苦しめた。
「えっ!そんなところ人がいたのか!」と驚くようなところに人がいて、ボールを持っていた選手がパスを出すとともに前に走り出し、パスを受けた選手がダイレクトに近いスピードで、パスを返すサッカーで言うワンツーパスが面白いように決められた。
地元チームは、アメフトのように「よし、前に投げるぞー!」ではなく、攻撃の自然な流れの中でフロントパスを使うタイミングがものすごくうまかった。
ディフェンスが前に意識を集中させている間に裏を取られている。
田﨑がフルバックでフロントパスを警戒して、距離を詰めている間に、逆サイドにフロントパスというプレーもごく普通に決められたのだった。
そしてそもそも体力が続かなかった。
舐めていた7分という時間でもラストは歩いてすら、攻撃もディフェンスもできず立ち尽くすのみという印象だった。
組織として洗練された戦術、砂浜の不確かな感覚をもろともしない体力に田﨑たち全チーム完敗だった。
個々のポテンシャルで勝っていても、組織で負けることがあるということを情けない敗北で田﨑たちは身に染みて学んだ。
吉川はチームの情けない姿を満足そうに見ていたが、声を張り上げた。
「明日はグランドに6時集合だ」