第15話①髙橋亨
試合中に脳震盪を起こした髙橋は医務室に運ばれ、脳震盪のためそのままドクターストップとなりベンチから仲間の勝利を見守っていた。
髙橋にとってウォーリアーズは憧れでもあり、逆恨みとは分かっていても憎い存在だった。
社会人になる時髙橋にはブルーウイングスとウォーリアーズから誘いの声がかかっていた。
髙橋は迷ったが中村建設の名前や当時の監督や大学の先輩の誘いでブルーウイングス入団を決めた。
自分で決めたことなのだ。
しかし3年前ウォーリアーズが選手のプロ化や体制強化を行い、チームから日本代表候補を排出するようになってから、少しずつ髙橋は自分の選択を後悔し始めていた。
ウォーリアーズ入団トライアルを誰にも言わずに受けたこともあった。
しかし選手層の強化をはかるウォーリアーズの壁は高く不合格となっていた。
髙橋はその日からウォーリアーズを忌々しく感じていた。
もちろん髙橋は自分の憎しみはお門違いだと頭では分かっているが、どうしても負の気持ちは止められなかった。
そんな中、仲間たちと掴み取った一勝は自分の過去の選択の後悔からウォーリアーズを逆恨みしていた気持ちを昇華させ、ブルーウイングスで再び頑張るモチベーションを髙橋に与えた。
副キャプテンの自分がグランドにいられない申し訳なさを感じつつも仲間と勝利を一緒になって喜んだ。
チームはリーグ開幕に向けて士気高くまとまりつつある中、髙橋は試合直後から脳震盪の後遺症に悩まされていた。
日を重ねるごとに軽減されるはずの頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気が治らず、夜間にはふらつきが出て立つこともできず、痛みや不快感で眠れない日々が髙橋を襲っていた。
髙橋は練習後に体調の悪さを田崎に話したところ、産業医の受診を勧められた。
予約を取ってくれた田﨑の顔を立てるため受診したところ、産業医はすぐに紹介状を準備し大学病院へ行くよう髙橋に伝えた。
産業医からは、なるべく早く行くようにと何度も釘を刺された。