第6話②川島豪
SNSについては田﨑も頭を悩ませていた。
川島と同じで何を投稿すれば良いか分からず、
文章を書いては投稿せずに消すことを毎日毎日繰り返していた。
今日もコンビニで買ったコーヒーを飲みながら、
何を投稿しようか悩んでいた。
「久しぶりに悩んでいるね。どうしたの?」
と背後から人事課の先輩の村西樹に声をかけられた。
田﨑は村西の顔を見て表情を緩めた。
「村西さんSNSしていますか?」
「しているよ。急にどうしたの」
村西は答えた。
「うーん。じゃあ村西さんは推しの人フォローしていますか?」
田﨑は聞いた。
質問に驚いた顔をしながら村西は答えた。
「当たり前じゃない。しているよ」
「その人はどんなこと投稿していますか?」
田﨑は次いで質問した。
「普通のことだよ。
今日は何を食べた。とか、かわいいもの見た。とか、楽しかった、悲しかった、誰と会ったとか。
かな、、、なんか田﨑くんに尋問されているみたい」
と村西は笑いながら答えた。
「それってファンの方は嬉しいんですか。
例えば僕が今日、何を食べたとか興味ないと思うんですよ」
という田﨑のぼやきを聞いて村西は質問の意図を理解してニヤニヤ笑いながら、
「田﨑くん!ファンはなんだって嬉しいんだよ。
いつも推しのことを考えているんだから。
例えば田﨑くんが飲んでいるそのコーヒーをあげてもらえるだけで、今コーヒー飲んでるんだ。って幸せになるものなの。
コーヒーの写真と午後も頑張ろう。とかメッセージ付いていたら、私ならすぐに同じコーヒー買いに行って『推しに応援されたから頑張る!』ってなるよ。
どこかで食事していることが分かれば後日お店に行き同じメニュー食べて聖地巡礼とかするんだから!」
仕事でもなかなか見ない一気に話す村西の熱量に驚きながらもそんなものなのかな、、、と田﨑は考えていた。
チームの雰囲気もスローガンの下一体感がうまれてきている。協力してくれる選手が増えている中で自分が水を差す訳にいかないので、半信半疑だが村西を信じて田﨑は投稿をしてみた。
飲みかけのコーヒーの写真と
「午後は眠くなるけど、頑張ります」と一言を添えて。
頑張ろう。と励ますなんて烏滸がましいと考えてしまい、自分が頑張る宣言が精一杯だった。
投稿を終えた田﨑は仕事に戻った。