第4話②練習試合横浜大学戦
試合開始のホイッスルが鳴り、
横浜大学のハーフウェイラインの中央からキックを田﨑がキャッチし、大きく自陣を回復し試合が始まった。
照りつける太陽の下で、試合は進み後半ラスト3分。
予想に反してブルーウイングスは負けていた。
最後の力を振り絞る田﨑達が守る前で、横浜大学がボール展開をした際に、取り損ないノックオンがあったように見えた。
そこで、田﨑達は足を止めてしまった。
攻めの姿勢を保った横浜大学はすぐにボールを拾いプレーを続けインゴールにグラウンディングした。審判はノックオンではないと判断し、結果トライが認められた。
トドメの得点を取られた。
試合終了のホイッスルが鳴り、練習試合は10対24で負けた。
負けたことに加えて、自分達に攻めの姿勢が失われていたこと、勝ちに対する執念が不足していることが浮き彫りになった田﨑達にとって痛い敗戦だった。
試合後ストレッチをしている田﨑に
「田﨑さん」と松戸瑞江が声をかけた。
「わざわざ来てもらったのに負けちゃって、、、」と、言いかける田﨑に、
「田﨑さんうちわにサイン下さい」
と松戸瑞江は無邪気に笑う。
「これ作ったの?」という田﨑の質問に、
「はい。田﨑さんファンとして頑張って作りました」
と松戸瑞江は派手なうちわを誇らしげに見せながら答えた。
「なかなか会えなかったけど、今日会えて良かったです。
仕事の意味とか何に繋がっているかなんて、田﨑さんと話すまで考えていなくなかったです。
なのに今の仕事は意味がない。って狭い自分の考えで決めつけていました。
あの日からどんな仕事でも、何のためにするのかな。って考えられるようになりました。
経営企画の先輩にも新入社員はまだ仕事の意味や価値なんて分からないから最初は伝えてあげて欲しい。って田﨑さんが話をしてくれた。と先輩から聞きました。そのおかげもあるんですけどね。
田﨑さんありがとうございました。
なので田﨑さんにお礼を言いたかったのと、ファンとして応援に来ました!」
「自分もまだ意味なんて分かっていないけど」
照れてサインをしながら田﨑は答えた。
サインを求められることも久しぶりだった。
サインを書いている田﨑を見ながら松戸は話した。
「今は経営企画で会社のプレゼンス向上に関わることができそうなんです。その際はブルーウイングスの皆さんのお力を借りますね」
「あんな負け方していたら企業イメージが下がっちゃうよね」
田﨑が答えた。
「私は正直、ラグビーのことはまだ全く分かりません。
でも最初は試合よりアイドルに会いにくるようなファンがいてもいいと思います。私みたいに。
ルールも分からず来ました。でも今は楽しかった。と思っています。今まで試合を見に来ることがなかった人が来てくれる。それってすごいことですよね。それだけでイメージは上がります。
でもやっぱり長く応援してもらうには、ワクワクする試合を見せてくれて、勝ちの喜びを一緒に味合わせくれるチームじゃないとダメですね」
手厳しい新入社員の言葉を聞きながら、田﨑は先の長い道のりを考えていた。