第25話⑦入れ替え戦終了
田﨑は人事部の先輩である村西樹と話していた。
「村西さんのおかげで自分がダメにならずにすみました。
仕事もラグビーも」
「そうだね。ダメダメだったよね。
仕事は自分で努力しないで与えられないと、
不満ばかりで。
子供でももっとしっかりしていたよ」
村西のきつい言葉はいつもにも増して鋭利であったが、田﨑はなぜか嬉しくなった。
「今はどうですか?」
「仕事はまだまだダメだね。見ていてイライラ、ハラハラするよ」
顔をしかめる村西に田﨑は笑顔で聞いた。
「仕事は、、、ということはラグビーはどうですか」
「ファンクラブの推し選手の1人に選ぶ位には応援しているよ」
「素直じゃないですね。村西さんは、、、」
「何が言いたいのよ」
強い口調で言い返す村西をなだめながら、
田﨑はそっと右手を差し出した。
村西は力強く握り返しながら
「これからもラグビーに夢中でいさせてね」
笑顔で答えた。
田﨑は村西にペンを渡して、村西がチーム残留に丸を付けた。
「これからもよろしくお願いします」
グランドで闘うメンバーは決してスーパースターではない。
格好悪く、泥臭く足掻きながら毎日を過ごしている。
それでも一歩づつ自分のすべきことを愚直に続けている。
田﨑はブルーウイングスのメンバーであり続けたい心とから願っている。
笑顔を返し、村西から残留希望の紙を受け取りチームメイトが待つ輪の中にかえった。
田﨑を待つブルーのユニフォームに包まれたメンバーの輪は羽根を広げた鳥のようだった。