第25話②入れ替え戦終了
試合を終えて感動がおさまらないまま、選手達は応援に来てくれた人たちに感謝の言葉を伝えていた。
桜庭は部長の春山を見つけ声をかけた。
「春山さん!今日も大応援団ありがとうございました」
「俺も暇じゃないから、仕事に結び付かなきゃ来ないよ。
桜庭だけじゃなく、メンバー全員営業見込み数字上がったからな。」
と、豪快に笑った。
春山が顧客を招待しない日も試合に来てくれていることは桜庭も知っていた。
「ありがとうございます。
仕事はさ、売上を上げるやつだけが偉いんじゃないよな。
営業サポートも付いているし、そもそも後の仕事を任せられる人たちがいるから安心して受注できるよな。
ラグビーも同じだな。
試合に出て得点を取るやつだけが偉いんじゃなく
て、トライをする道をみんなで切り開いている。
試合に出られないやつらも、練習相手に全力でなっている。
みんなで進まなきゃいけない、そして成果はみんなの努力なんだな。って仕事もラグビーも似ているな」
春山は穏やかな顔で続けた。
「桜庭らしくチームへ貢献していたな。
試合に出られることだけが全てじゃない。
それを分かって、桜橋がチームに貢献することを選んでいるうちは俺はずっと桜庭を全力で応援するからな」
桜庭はまた涙が止まらなくなっていた。
試合に出られないことに悩み、苦しんでいた。
そこから自分らしくファンの方との関わりを増やしチームに貢献してきたつもりだったが、
桜庭はそれで良いのか悩む日々だった。
春山はそれでいいんだよ。と自分を肯定してくれた。
笑顔で春山は
「お疲れさん」と桜庭の肩を叩き出口へ向かい歩き出した。
桜庭は来シーズンの残留希望に力強く丸を付けた。
迷いはなくなっていた。
秋野は妻の美幸と話していた。
「お疲れ様!
そして昇格おめでとう!」
周りには子供たちが走り周り、
「パパすごいすごい!」と興奮していた。
「今シーズンもフォローしてくれてありがとう。
毎試合応援に来てくれて、子供たちを連れてだから大変だっただろ」
「子供たちもすっかりラグビーに夢中だから、
私もゆっくり見られたよ」
「あのさ、、、来シーズン」
秋野が言いかけたのを遮るように、子供たちが言った。
「パパ!
次の試合も頑張ってね!」
「あっ、、、」と返事をしない秋野を正面から見た美幸は笑顔で頷いた。
「パパ頑張るから、また応援に来てくれよ。
ママを困らせないようにな」
「はぁーい!」
と答え、また遊びに走り去った。
子供たちを見送り、秋野は美幸に言った。
「今シーズンもありがとう。
来シーズンもよろしくな」
秋野は美幸と一緒に来シーズンの残留希望に力強く丸を付けた。