表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

第十三話

「……うわあ……」


 全体が淡い青色に発光した岩壁。床に溜まった水がそれを反射して、神秘的な輝きを辺りにもたらしている。

 その光景を前にして、僕は、ただただ感嘆の声を漏らすしか出来なかった。


「綺麗ですね……危険なダンジョンだなんて、思えないくらい……」


 僕の少し後ろを歩く月音さんも、辺りを見回しそう呟く。僕達は今先頭をアイさん、最後尾を月音さん、その中間にサポート役の僕という隊列で進んでいた。


「海底洞窟と海底神殿はどっちも、レジェワス二周年の時に公式でやった『好きなダンジョンランキング』のトップ5入りしてるからねェ。マァ、出てくる敵のいやらしさもトップクラスだけど」

「解ります! レジェワスって本当、グラフィックはすごくいいですよね!」

「それがリリース当時からの一番の売りだったしねェ。その分システムは大味と言うか大雑把と言うか」


 アイさんと月音さんが歩きながら、アイさん達の世界の言葉をふんだんに使って会話する。僕にはその内容はほとんど解らなかったけど、アイさんの機嫌がどうやら直ったらしい事に少しホッとした。


「あの、月音さんは今までどんな所を旅してたんですか?」

「私ですか? そうですねえ……大森林とか雪原とか色々と。まあ、魔物が怖いので、ほとんど納品クエストで行っただけですけど……」

「僕はまだ旅を始めたばかりで、クエストも全然出来ていなくて……Leiraさんが、色々手伝ってはくれてるんですけど」

「そう! まさかあのLeiraさんとパーティーが組めるなんて! Leiraさんって言ったら私みたいなエンジョイ勢でも知ってる、超有名プレイヤーですもん! 引退前に、こんないい思い出が出来るなんて……!」


 アイさんの通り名を出すと、途端に月音さんのテンションが目に見えて上がる。アイさんはこの世界に来る人にとって、本当に有名な存在らしい。

 確かにアイさんはデタラメなくらいに強いし、みんなの前では隠しているけれど、スキルとは違う不思議な力だって使う。でも、アイさんがそこまで特別な存在かというと、それは何だか違うという気が最近はしてきている。

 自称カミサマだなんて名乗ってるけど、アイさんもやっぱり人間で。楽しければ笑うし、ムッとすれば怒って。

 能力はともかく、中身はきっと何でもない普通の人間なんだって。少しずつ、そう思うようになってきたんだ。

 だからかもしれない。アイさんの事がもっと知りたいと、そう思い始めたのは——。


「……ところでマコトさん。一つ、気になってる事があるんですけど」


 そんな事を思っていると、不意に月音さんが話題を変えた。


「はい、何ですか?」

「……何でお二人とも、水着姿のままなんですか?」


 そう困惑の表情を浮かべて言う月音さんに、思わず何と答えるべきか迷う。そう、僕とアイさんは、今も水着姿のままだった。

 実は、一度着替えようとはしたのだ。そうしたらアイさんが「せっかくだからこのまま行こうヨ」と言い出し、更にアイさんの力で装備を替えられないようにされてしまって……。

 その間月音さんは、席を外すと言って反応がなくなっていた。だから、その経緯を知らないのだ。


「……ここも海の一部だから、かなあ?」

「うーん……でも正直、目のやり場に困るんですけど……」

「ですよね……」


 まさか自分の意思で着替えられなくなってるんですとも言えず、どう誤魔化したらいいのか考えを巡らせていると。


「さァて、世間話はここまでみたいだよ、キミ達」


 不意にそう言って、アイさんが足を止める。見れば前方に、何かの影が揺らめいていた。

 それはとても、奇妙な姿をしていた。強いて言うならイソギンチャクに似ている気がするが、頭に生えた無数の細かい触手をうねらせる様は、どこか生理的嫌悪感を感じさせる。


「ヒイッ、気持ち悪いっ!?」

「ブルーローパーだヨ。麻痺の追加効果持ちだから、通常攻撃にはよーく気を払ってネ」

「は、はいぃ……」


 返事はするものの月音さんはすっかりおよび腰で、どうやら戦いどころじゃない。ここは僕とアイさんで、何とかしなければいけない。


「さァて、ウォーミングアップといこうかネ」


 そう言ってアイさんが大斧を構えるのを見ながら、僕もまた、投擲用のアイテムを取り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ