24 三つの戦場
「なんやよう分からんけど、さっきの爆発の音は聞いたかぁ? アレ、坂のいつものやつや。あんたらも参加者らしいでぇ」
そんなヘラヘラした清水の言葉を聞いたすぐ後、高松香河は──いや、チェイネンのほぼ全ての人間がとてつもない爆撃に飲まれて死んだ。
と思ったら次の瞬間には生き返っていて、何が何だか分からないところに東野京がやってきた。
「僕は仕事を終わらせたよ」
発言の意図はすぐにわかった。先の爆撃を何とかしたのは東野だ。
そして裏の意図は『君の仕事は終わっていない』。僕は、と言うことはそういうことだ。
高松は恐る恐る尋ねた。
「……まだ何かあるの?」
「少なくとも松山は僕と香河を要請したね」
「あー、面倒なことしてくれるなぁ」
ていうか松山来てたんだ。高松と東野を顎で使おうとするとは、彼も偉くなったものだなぁ。もちろん皮肉だが。
ボス二人の冷静な現状確認を見て、恐慌に呑まれそうになっていた他の生徒たちも落ち着いた。彼らもまた東栄生である。
ついさっき『一度死んだ』のに皆はすごいなあ、と高松は他人事のように思った。高松自身は常日頃から慌てた姿を見せないように気を配っている──統率方法が包容力=母性であるため──が、他の皆はそうではないのに。
「じゃあ皆、一旦松山と合流しよっか。四十川って松山と仲良かったよね。場所わかったりする?」
四十川高。筋骨隆々しい肉体に四角い顔を乗せた男が憮然としたまま答えた。
「……沖では無いのだからそんな『祝福』は持っていない。先に沖と合流するか?」
「ん〜、いや、苗覇はほっといて良いかな。あいつに限って下手な真似はしないでしょ」
「……松山なら裏門に行ったで。女の子連れて良い御身分や」
口を挟んだのは東野の後ろから歩いてきた清水ケイト。なんだか体調が悪そうだが、高松は気にしない。
「ケイトちゃんだ! 他にはない?」
「……お友達に恵まれたんやろな、この国が危ない〜言うて慌てとったわ」
松山はそんな性格ではない。清水のいつもの軽口だろうと軽く聴き流す。
「……なるほどね。じゃあ裏門行こっか」
早々に方針を決めて高松は動き出した。衛兵を募り、裏門へと進む。
そしてそこで異様な光景を目にすることになる。
「……え、何あれ」
外壁に登り、そこでは迫り来る死者の軍勢を一望できた。楽観派には魔法使いが多いので戦略的に高所を取ったのだ。
松山もそうしていると思っていた。確か魔法使い志望だった筈だ。四十川の祝福では大雑把な位置は分かっても、詳細に調べようと思ったら時間がかかる。
だから、目に入った情景に誰もが言葉を失った。
「……あれは……松山か?」
四十川高が呆然と呟く。
そう、松山だった。彼は高所から魔法で狙撃するでも剣を持って戦うでもなく、ただそこに佇んでいた。
裏門から百メートルほど離れた地点。松山愛人は怖いものなど何もないと言わんばかりにズンズンと歩いて行く。
そして実際、彼は無傷のようだった。それどころか彼に攻撃したものが死んでいく。
万にも上る死兵の群れが、たった一人を袋叩きにして殺し切れない。そして何より不気味なのが──
「……何であいつ、笑ってるの」
──松山愛人の顔が狂笑に染まっていること。
服装も見たことがない。まるで猟師のような格好をした彼の周りには撒菱のような鎖? 棘が撒かれている。それを踏んだものはもちろん、松山に攻撃しても死ぬ。近付いても死ぬ。
「……四十川、友達でしょ。あいつの奇行を解説して」
「知らんよ、あんな奴は。まあいつもの思い込みと変貌で対処しているのだと思うが──凄まじいな。どんな『祝福』だ? アレでは俺たちも近付けん」
「そうでしょうね〜。私の『絶対防御』も警告してる。アレに近付いたらやばいよ〜って」
「となると敵味方の区別を付けてないのか? ならば、長くは保つまい」
「それも同意。はあ、しゃーない助けてやりますかぁ!」
この世界は少し自由度が高すぎるが、リソース自体は有限だ。
基本的に魔法は魔力を、祝福は体力を使用する。体力というより気力と言った方が分かりやすいだろうか。どちらにしても枯渇するとどっと疲れる。
そして眼下で暴れ続ける松山は、リソースの損耗など度外視しているみたいだった。遠からず限界が訪れるだろう。
「……でも、アレに手ぇ出したくないよねぇ」
意気込んだは良いモノの、高松はうへぇ、と顔を顰めて言った。
松山が自分の世界に入った時に口出しする者は東栄にはいない。面倒なことになるのが決まっている。
何より救い甲斐が無いのが、松山がとても楽しそうなことだ。何であんな命を張っているんだろうか。そしてそれを楽しめるのだろうか。平和が一番良いだろうに。
そう口では不平を漏らしながらも、高松は死ににいくクラスメイトを見捨てるほど薄情ではなかった。
高松は注意深く松山の動向を凝視しながら、やがて来る彼の限界を見極める。彼の魔法か祝福か、無敵モードと共に無差別攻撃が途切れた瞬間を狙ってぐっと手のひらを開いて──
「──『盾』」
高松が手のひらを閉じて胸の前に引き寄せる。
「それから『回避』」
瞬間、百メートルは先に見えた松山が城壁まで引き寄せられる。やっぱり異世界の『祝福』って便利だな〜と高松は感嘆した。
目の前では松山がぽかんと呆けている。本当に死を覚悟していたみたいな表情だ。いつも飄々としているけ彼のこんな顔は新鮮で、小気味良い。
さては戦闘でハイになって後先考えてなかっただけだなこいつ?
高松はにんまりと笑って言った。
「無茶し過ぎだよ〜。何で一人で国守ってんのさ」
これは紛れもなく戦争だった。楽観派とか言われているが、高松は別に何も考えていないわけじゃない。
高松の武器は正しさだ。彼女に従っていれば間違いない。損はしない。及第点は取れる。そんな安心を持ち前の包容力で提供している自負がある。
だから彼女は衛兵と戦士を募ってここへ来た。何も一人で戦う必要はないのだ。
「まあ、その時間を松山が稼いでくれてたんだろうけどね」
本人が何を考えているのかよく分からないところが玉に瑕だが、与えられた役割をこなす事において松山の右に出る者はいない。
松山、楽観派に向いてると思うんだけどな、と高松は思う。いや、それで言ったら水戸も三枝もそうか。
松山は楽しければそれで良い興味派の気質もあるし、水戸は味方に裏切られたくない悲観派よりも悲観的な思想で、三枝は不思議な第六感で安定派よりも安穏と暮らせている。
どこにも属せないのではなく、どこにも属せるから選ばない。選べないのではなく選ばないからどこにも取り込まれていない三人。
そんなことを考えていると、眼下で松山の勇姿を見届けた戦士たちが奮起していた。
「異世界の勇者たちに続け!!!!」
「「「おお!!」」」
ここは戦士の国チェイネン。不意打ち闇討ち先制攻撃でどうにかならなかった以上、敵にはもう正面衝突の選択肢しか残っていない。
「皆さん、防御は任せてくださいね〜!」
そんな戦士たちの全身を青いバリアが覆っている。斬撃をいなし魔力を解く鉄壁の盾。
高松の祝福は『絶対防御』。直接的な攻撃力こそないものの、サポート性能は随一だ。今はまだ『盾』と『回避』くらいしか使えないが、訓練すればもっと多彩なことも出来そうな雰囲気がある。
絶対の盾に守られた精鋭達が死者の軍勢を蹴散らし始めるのにそう時間は掛からなかった。
○
ところ変わって森の中。都市郊外にある廃墟の奥でアマビエは困惑していた。
何が起きたのか、判断がつかなかった。ニュークリア・ロウは確かに着弾したハズなのに、その全てが無かったことになった。
「……時、魔法……? ありえない……都市を丸ごと……?」
失敗の二文字が脳裏を過ぎる。
ただでさえ成功率の高い試みでは無かった。魔王様はこれを『敗戦処理』と称した。
実際そうなのだ。それだけヌリカベの働きは大きかった。神出鬼没に移動でき、牢獄として使っても一級品。どんな英雄も補給戦を絶たれれば撤退する他に無いし、迷宮から脱出するのは難しい。
そのヌリカベが死んだ。ただでさえノーシーストで膠着していた戦況はすぐに押し返されるようになるだろう。
だから博打に出るしか無かった。
『戦士の国』チェイネンを滅ぼす。同時に武道祭に集まった各国の有力者を殺す。
そのプロパガンダを持って人類に『魔王軍には勝てない』という新しい価値観を植え付ける。
勝算は低かった。武道祭を狙うというのは好機であると同時に難儀でもある。各国から強者が集っているのだから。
だがゼロではなかった。ガシャドクロはあれで馬鹿みたいに強いし死体を操ることができる。死体は現地調達も出来るため戦力はほぼ無限。加えて、アマビエの超広範囲攻撃もある。
魔力は半分ほど残っている。もう一度『追悼の意を込めて』を放つか? 慣れ親しんだ魔法では無い。先ほどのような威力を出せるとも限らないし、敵には超級の時魔法使いがいる。
正門では凄腕の魔法使い二人が。
裏門ではやけに精強な兵士たちが。
それぞれ死者の軍勢に抗っている。どちらかを突破しなければならない。
「まだ、負けてない。ガシャドクロもいる……」
目的は人類に恐怖を植え付けること。
ガシャドクロの『要人暗殺』が成功すれば最低限のソレは果たされる。
(……大丈夫。あいつは『聖水』さえ貰わなければ──)
「なるほど。死人に聖水とは、道理ですね」
──ひたり、と背中に手が添えられていた。
「!?」
ひんやりとした小さな手のひら。どうやってここに。いつの間に背後に。いや違う、問題はそこではない。
咄嗟に手を振って振り払いながらアマビエは考える。
「だ、誰! 人の、思考を勝手に……!」
そう、問題は心を読まれたこと。
そこにいたのは男女の二人組だった。心を読んだのは女の方。サラサラの金髪を肩口まで伸ばした人形のように無表情の女。
「どうやって。いつの間に。魔王軍というのは知恵が足りないのですね。手を出せば反撃されるなど、坂伊坂でも知っていると言うのに」
白けた目でアマビエを見る読心術の女。
男──褐色肌の坊主頭がそれを嗜める。
「浜松、ケモノってそれ変なニュアンスが含まれてねぇ? あ、なんで居場所が分かったかってのは、俺の祝福『闇雲の追跡者』のおかげだぜ!」
「……沖。無闇に答え合わせに応じる義理はありません。こちらが相手から聞き出す必要はないのですから」
「お前が触れたら分かるもんな!」
「……だから、沖……はあ。これだから楽観派は」
読心術の女──浜松神奈。
追跡者の男は沖苗覇。
アマビエには知る由もなかったが、二人はそれぞれ安定派と楽観派のNo.2だった。
警戒を露わにするアマビエの前で、浜松が沖に伝える。
「『ガシャドクロの弱点は聖水』。あなたはこの情報を持って都市に帰ってください。魔王軍の幹部が都市に潜んでいるらしいですよ」
「お、いいのか? もうちょい情報読み取れたりしねぇの?」
浜松が苛立たしげに再度撤退を促して言う。
「……あなたが不用意にバラしたからでしょう。もう一度『触れる』となると難しいでしょうね」
「そりゃ悪いね! じゃあ後は任せたから、よろしく〜」
そう言って沖はさっさと帰ろうとする。
「そんなの、させる訳、無い!」
何が何だか分からないが男を見逃してはならない。ガシャドクロの弱点を知られてしまった。他ならぬアマビエの失態で。
すぐさま魔法の雨が沖を襲った。アマビエの得意魔法は水属性だが、他の魔法が使えないわけではない。
速度を重視した風魔法で足を絡め取り、水魔法で拘束。そのまま火球で燃やし尽くすという必勝の不意打ち──
「貴方の相手は私です」
「!?」
──それが、女が剣を一振りしただけで解け消える。
アマビエはこの現象を知っている。恐れていた事態ではあった。だから結界を張って都市から遠く離れた絶対に見つからない森の中にいたというのに。
魔王軍幹部ともあろうものが森に隠れ潜んでいた理由。ガシャドクロだけが潜入して、アマビエが行かなかった理由。
「忌々しい、『無意識の、魔力』……!」
「『魔法使いは戦士には勝てない』。ここは戦士の国チェイネンですよ。寄られた時点で貴方の負けです」
もう男の姿は無かった。逃げられた。
失敗の二文字が、脳裏で存在感を増す。考えろ。目の前の女を突破して男を殺す? 不確定要素が多すぎる。もう一度核をぶっ放す? だめだ、魔法を完成させる前に斬られる。
「あ、はは」
アマビエは開き直った。目の前の女の澄まし顔に大事な血管のどこかが切れて、それで変に冷静になった。
ガシャドクロほど脳筋になった訳ではないが。
全員殺せば、それでアマビエの勝ちなのだ。
まずは目の前の女から。
「魔王軍幹部──『誠実』のアマビエ」
「……? ああ。私は浜松神奈。東野様の──従者? 下僕? 同伴者。そんなところです」
名乗りあげるは『人』としての矜持だ。
今日ここに新たな『人類』として産声を上げるための。
まずは目の前の女に教えてやらなければならない。『無意識の魔力』は大概万能だが、無敵では無いということを。
○
チェイネン都市ワイドランド。突如災禍に見舞われたこの場所の戦場は三つあった。
死者の軍勢を抑える高松らやシュトローム姉妹。
アマビエを捉えた浜松神奈。
そしてもう一つが、ガシャドクロと戦う三人だ。
一人は過呼吸を起こす少女──岩永仙。
「──ハァッ……死んだ、死んだ死んだ死んだ死んだ……! 首、飛んで、首無し死体……私の身体……わたし、生きてる……?」
岩永は『追悼の意を込めて』で死んだのでは無い。その直前、ガシャドクロに首を刎ねられて死んでいた。
生き返ったのは偶然だった。東野の『保存』があと少し遅れていれば間に合わなかった。そんな紙一重の奇跡。
「岩永ちゃん、だっけ!? 早く逃げなよ! ここは僕に任せて良いからさ、大丈夫、僕は負けないのは得意だ!」
腰を抜かす少女を守るのは『守護神』ケンケン。もう五分近くは敵の猛攻を凌いでいる上に傷一つ負っていない彼は、岩永を足手纏いだと判断してそう叫んだ。
だが、そんな戦力外を執拗に狙うのが敵──四つ腕の剣士ガシャドクロ。
「ハッハー! 魅了に抗うコツは掴めたがな、催眠とは軟弱なことよ! 戦士なら正々堂々戦わぬか!」
「この子は、戦士じゃないでしょっ!」
実際ガシャドクロの動きはだんだん早くなっている。岩永の精神状態が悪いのかガシャドクロに耐性がついたか、デバフの効きが悪くなっていた。
弱くて厄介な者から狙うのは理に適っている。脳筋に見えるガシャドクロの嫌な合理性にケンケンは舌打ちした。
「……」
そして最後の一人は坂伊坂。
祝福『剣術の達人』によってただでさえ類い稀だった剣士の才能が開花した剛毅な青年は、ただそこに佇んでいた。
「……異世界の勇者、ねぇ……っ!」
ケンケンはこの二人が松山の同胞だという確信を持っていた。
変な名前に見たことのない顔立ち。幼い精神と対照的に強靭な祝福に魔力。
五十人弱召喚されたという人類の希望──その実態は、ただの学生だったと言う。戦争のない平和な世界で過ごしていた一般人。
ケンケンには兵士としての自負がある。力もある。無辜の民を守る責任がある。
それで言うと、この二人は『守られるべき無辜の民』側の人間だったのだ。それがいきなり戦争真っ只中の世界に召喚されて戦わされるのだから、こんなに酷なことはない。
「……右足、半歩前。握りは強く、脇を締める。正面から受けずに半身になって避ける。剣は両手で持った方が良い。駄目だ、もっと脱力しないと……」
「……?」
そんな時だった。ぶつぶつと呟き声が聞こえた。思わず声の出どころ──坂の方を見てしまう。
「しまっ」
剣戟の最中によそ見など言語道断だ。執拗に岩永を狙っていたガシャドクロが、隙を見逃さずケンケンに斬りかかる。
「もらったぞ!」
死にはしない。だがどうする。何を捨てる。
犠牲なしにはこの攻撃を受け流せない。何せ反応が遅れ剣を合わせる時間がない。『構え』に入ったケンケンはほとんど無敵だがそれには僅かに前隙がある。
右手は捨てられない。利き腕だ。足も同様に捨てられない。機動力を失うわけにはいかない。左手……かぁ〜! 仕方ないなぁ!
「シッ!」
そう決意して、ケンケンが左手で手刀を構えた時だった。
「ぬうっ!」
振りかぶったガシャドクロの右腕──そう、右腕だ。
それが根本から断ち斬られていた。二本とも。
咄嗟にケンケンが構えた手刀追撃するが、肉体のバランスを崩したガシャドクロはすぐに退いた。まあ当たっても大したダメージにはならなかったからそれは良し。
「……フゥ、ハァ、く、くく」
問題は坂伊坂。その成長速度だ。
ケンケンは彼の目を見て戦慄した。諦め切って絶望した一般人の眼ではない。
「……松山ぁ、冗談きついよ……」
平和な世界からやってきた? とんでもない!
アレは生粋の戦士の瞳だ。生まれた時から闘争に明け暮れた者の眼差し。狂気と闘気に支配された、今は時代が許してくれているだけの人種。
「もう大丈夫なの?」
ひとまず、敵ではないと思いたい。若い頃の自分もこんな感じだったのかなぁ、とケンケンには感じ入るモノがある。あの頃の自分に理性など無かった。
「ああ! やっと『祝福』の使い方が分かってきたところだ! もっとちゃんと頼ってよかったんだな、コレ! 才能に身体を預けて──自分が自分じゃないみたいで面白ぇ!」
果たして坂伊坂は正気だった。正気に正常に狂っていた。頬が上気して眦は吊り上がり口角は上がっている。
坂の視線の先、ガシャドクロの右腕が再生する。血も出なかった。種族は何だ? 鬼族か、巨人族か──見たことない種類の魔人だ。
「再生、するのか……無限じゃないと思いたいなぁ」
「全身斬り刻めば嫌でも死ぬだろ! おい仙! 何呆けてるんだよ、魔王軍だぞ! 早くお家に帰りたいんじゃなかったのか?」
坂の言葉に岩永がハッと視線を上げた。
悔しさを噛み締めるような表情から、落胆と高揚、憤怒で恐怖を捻じ曲げて──一人百面相の後に立ち直る。
強い子だ、とケンケンは思った。
「……ああ、もう……分かってるわよ。やるわ、やるわよ、やれば良いんでしょ! あんまり使いたく無かったんだけど──『変身』……!」
岩永の身体が光る。その肉体が──『魅了の魔眼』の使用に相応しいモノへと作り変えられる。
尻尾が生え羽根が生え、角と共に目が赤く光る。
淫魔、と知る人が見ればそう呼ぶだろう。もはや滅んだ伝説の悪魔の姿に変わった岩永は──赤面した。
「ああ、もう! 何でこんなに露出が多いのよコレ〜〜〜!!」
「フ、クク。フハハハハ! ──脅威だな。成長が楽しみではあるが、今の我は若い芽を摘まなきゃならん立場だ……口惜しいのぅ」
変貌した二人の様子を見てガシャドクロのギアも上がる。
ゴキゴキと肉体が脈動し、四本腕は六本腕に。下半身は馬のような四本脚に成り変わる──変幻自在の『合成獣』か?
「……若いって、良いなぁ……」
ケンケンの呟きと共に戦線が動き出す。
沖苗覇が『ガシャドクロの弱点』を持ってくるまで、残り十分。
四十川高:モチーフは西郷隆盛。
ちなみに異世界の勇者のモチーフは都道府県。
安定派は関東・中部南部(東野、浜松など)
悲観派は東北・中部北部(岩永など)
興味派は中国・近畿(坂、清水など)
楽観派は四国・九州(高松、沖、四十川など)




