中学生読者は「青い鳥文庫」・「つばさ文庫」などに逃げた
え? 嘘?
本当です。嘘だと思うのなら手に取って。俺もびっくりなんだけど最近の「青い鳥文庫」って小学校中学年や小学校高学年が主人公じゃないんですよ。中1とか中2なんですって。で、なんと児童文学市場が急拡大したのです。もっと言うと児童文学のラノベ化、高年齢化現象という物が起きました。
見てください。児童文学市場額はこの少子化なのに激増しています!
そりゃそうじゃん。小中学生なのにリストラオヤジが夢見る「異世界転生」なんて願望持つ? 持つわけねえだろw つまり「読者難民」が発生したんだな。
つまり本来ランドセルしょってる子の夢だった本が生徒の世界に移ってるって事。マジだぞ。『黒魔女さんが通る』とかの時代じゃねえんだぞ。『君と100年分の恋をしよう』とかの時代なんだ。『君と100年分の恋をしよう』のファンレターのコーナー見た? 中学生どころか高校2年・女子のファンレターがちゃんと掲載されているんだ。完全にもう中高生女子からラノベは見限られてるね。逆に「青い鳥文庫」は高校生・女子読者まで読者層獲得に成功しています。『獣の奏者』シリーズに至っては児童版なのに大人のファンレターが来てます。
あ、ここってカクヨム(角川)だから他社さんの宣伝(講談社)はダメか? でも「青い鳥文庫」は児童文学業界1位だから許して? 角川様許して。ちゃんと自社のもんも見ますんで。
で、「角川 児童文学」で検索してみた。
するともちろん「角川つばさ文庫」が出て来てここに児童版『スレイヤーズ』とかあったよ。これが現実だよ。
(※追記:試しに平積みされていた『絶対絶命ゲーム』(角川つばさ文庫)というものを書店で立ち読みしてみた。こりゃ大半のラノベ作品は適わないよ。素晴らしい出来だ。もちろん主人公は中学生)
でねー、俺単に「中年層にフォーカスあてたせいでラノベ市場が半減になった」という週刊文春の記事に何かしっくりこないものがあったんだよ。半分当たってるんだけどなんか違うみたいな。そうだよ。たぶんだけど異世界恋愛ジャンルにみんなもう飽きてねえか? まず男の子はこの手のジャンルに興味ねえよな? 問題は女の子だ。
そうだ。婚約破棄・追放・処刑→時間巻き戻し(人生リセットボタンという意味)・悪役令嬢・溺愛・元聖女様のセカンドライフ・令嬢様のクーデター物語に中高生の女子が興味を持つか? 持たないよね。たぶんだぞ。これって実はおばさんの願望なんじゃねえのかってこと。だって児童文学に「婚約破棄系」がまず無いじゃん! 嘘だと思うのなら最寄りの書店に行って女の子向けの児童文学の棚を漁ってみ?
そうだろ!?
次の章ではちゃんとデータとして証拠見せるから楽しみにしてくれ。
そもそも世の半分は女性だよ? ということは異世界転生・俺ツエー・チート・ハーレムなんかよりもラノベ市場激減の原因って実は10代の女の子の読者がほぼほぼ全員見捨てたから? じゃねえのかと案外本気で疑ってるんだ。男は割ともう高校生辺りになると弱者男性層あたりが「異世界転生・俺ツエー・チート・ハーレム」4点セットに興味持つんじゃねえのか。そろそろ高校生・男子ともなると己の人生の破滅フラグが見えてくる頃だし。
ラノベ市場半減の真の原因って実は男の子向けではなく女の子向けじゃね?
あと「スローライフ」とか辞めて。これおじさん・おばさんどころかおじいちゃん・おばあちゃんの発想だから。もう心が初老になってるか書き手も読み手も初老(45歳以上)になってるかの証なのね。中学生は「スローライフ」なんて1ミリも興味ねえのよ。やめてくれないかね。
ここでまた重要な事言うけど「ほのぼの系」と「スローライフ」って全然意味違うからな。ストレス社会から逃げて~とか追放後の隠居生活のことをスローライフと言うのであってほのぼの系物語とは全く違う。小中学生が読むほのぼの系には実は隠れた夢と冒険物語と友情物語と親子の愛情物語がセットであるんだ。君だって少年時代に仲間と一緒に秘密基地とか作らなかったか? それがほのぼの系だ。私の言ってる意味が分からない場合……君はラノベを書く資格が無い。「ほのぼの系」系は成長譚なんだ。これに対し「スローライフ」系には成長譚が無いんだ。
ましてや本のタイトルやあらすじに「社畜」とかあったら中高大学生は即ブラバ案件だからな。「希望は異世界転生です。この世に希望はありません。この世での人生は『社畜』でした」なんて物語を中高大学生が読むとでも? バカですか?
(※補足:念のために言うが実は「スローライフ」とは和製英語だ。欧米圏で言うスローライフとは大企業が提供するファーストフード文化やファストファッション文化などに対抗したカウンターカルチャーであってイコール大企業に猛烈に反対する1980年代生まれの文化の言葉である。「スローライフ」とは厳密には「スローライフ・スローフード」と言う。ところが日本に1990年代頃に「スローライフ」という言葉が輸入されたとたん反・大企業文化という意味ではなく隠居して自然と触れ合うといった全く意味が異なる言葉に化けた。よって「スローライフ」とは和製英語である)
最後に。2020年当時は「ラブコメ」ジャンル……要は中高生向けかつ非なろう系ラブコメがこれからのラノベのトレンドだと言われた。結論として言うと「ラブコメ」ジャンルのラノベは売り上げ下落の歯止めにすらもならなかった。いくら作品上で中学や高校を舞台にしても「非モテのV-tuberの俺、配信を切り忘れたら~」みたいな奴は所詮中年のもてない男の悲しい願望であって実際の中学生が求めるラブコメってのはむしろ『君と100年分の恋をしよう』(青い鳥文庫)みたいなやつなんだよ。分かる? ラブコメっていうのは男の子も女の子も読める作品にしないといけないという基本中の基本すらラノベ執筆勢は分かってないんだよ。だからラノベってダメなんだ。なお、『君と100年分の恋をしよう』は高校受験の葛藤シーンもある。なぜかラノベ執筆勢はそういうのを書きたがらない。だからダメなんだ。受験と恋の両立話ってのは中高生向けラブコメの基本中の基本なんだ。
『呪ワレタ少年』(角川つばさ文庫)とかもぜひ読んでみよう。もうラノベ顔負けの中学生用児童文学である。つまりこの作品は事実上の「ラノベ」なのだ。
驚きなことにいよいよ青い鳥文庫は『アンドロメダの涙 久閑野高校天文部の、秋と冬』(2023年9月発売)という高校生向き、舞台も高校の天文部という作品を出す。一応小学生でも読めるようになってるがこれはもう事実上のライト文芸だ。いよいよこの時が来たかと私は思ってる。
みんなリアル中高生はうんざりしてるんだよ。
――異世界転生だの萌えはもううんざりだ