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エンシェントエレファント-1

本日三話投稿です。(3/3)

読み飛ばしにご注意ください。



エンシェントエレファント「タイトルで名前バレ、でも作中では言及されません」

作者「ウケる」

 コレが一昔前のコンシューマゲームだったら、「導入気合い入ってる!」と喜んだだろう。

 コレが普通のVRゲーだったら、「スゲー!」と感動しただろう。

 だが、コレは違う。別格だった。質量が、存在圧が、確かにヤツがここに存在していると実感させる。嗚呼、このゲームをやってよかった。早くもそう思った。後で友人(アイツ)に礼を言おう……いや、この場にいるのか。

 まあ合流は後だ。今はこの場をめいっぱい楽しみたい。


 「ボンド!」


 思いは一緒なのだろう。前線でスピードが声を上げる。その声が引き金となって、この場に音が戻ってきた。

 我先にと象の元へ駆け出す奴がいる。ほとんど動かなくなった敵性生物(ザコ)を丁寧に潰していく奴がいる。既にグループが出来ているのか、チーム行動を始める奴がいる。一気に騒がしくなった中で、俺も負けじとスピードの元へ急ぐ。


 「遅くなった!」

 「殴りに行くよ!」


 律儀に待ってくれていたスピードが駆け出す。併せ、象の側も動き始めた。といってもその巨体故に動きは単調だ。

 長い鼻による薙ぎ払い攻撃を前傾姿勢で回避、風切り音を肌で感じながら、その巨体に接近する。


 「近付きゃただのデカイ的だろ!」


 ほぼ同時に近付いていた別プレイヤーが格闘(ステゴロ)で殴り掛かる。振りかぶった勢いのまま殴り付ける、がビクともしない。後続も結果は変わらず。


 「硬ぇ!」

 「ただの攻撃じゃ効かなさそうだな、表皮が天然の鎧になってる」

 「なら皮膚に覆われてないところを!」


 結果を見るより早く、スピードがさらに肉薄。木の棒を槍のように持ち、“突き”のモーションを取る。


 「()は生物共通の弱点!!」


 勢いよく踏み出し、跳躍。常人の倍以上を()()()彼女は、そのまま棒を突き刺そうとする、が、長さが足りない。

 象は、目の前に飛び出して来たスピードを目に止めると、軽く身じろぎをして、短く鼻息を鳴らす。


 「Vovo」

 「え」

 「予備動作短すぎだろ!!」


 その直ぐ後、二本ある象牙の内一本がスピードに向けて射出される。だが、高く跳び過ぎた代償か、スピードは未だ対空中で回避行動が取れない。


 「クッソ!」


 すんでのところで俺の木の棒を割り込ませる事に成功、弾く衝撃でバランスを崩しそうになる。気合いで踏ん張ってスピードの方に目を向ければ、無事に着地していた。だが代償はデカい。


 「助かった」

 「間に合って良かった。ただ、悲報もある」


 スピードに、象牙を受けた点を中心に折れた棒を見せる。更に象の方を見れば、射出した牙の()()()が新しく生え始めていた。


 「ワオ」

 「次は守れないと思ってくれ」

 「りょーかい」


 無いよりはマシだろうの考えで棒は捨てないが、この状況で継戦は無理だろう。情報整理の為一旦安全圏に下がる。入れ替わるようにして、俺達の攻撃を見ていた他プレイヤーが目を狙った攻撃を始めた。

 俺たちと同じように木の棒を持ってる奴や、石ころを投擲している奴。何も持っていないプレイヤーは補助に動いている。ただ、どれも決定打には至らない。


 「届きそうだった?」

 「もうちょい近付ければ、投げて刺せる、と思う」

 「出来るか?」

 「任せて、次は……」


 言葉を切ったスピードの視線を追うように象の方を見れば、象が群がるプレイヤーを鬱陶しく思ったのか、鼻を叩き下ろしてスタンさせている所だった。


 「うわエッグ……あの巨体で強制スタン攻撃はズルだろ……ああボーリングのピンみたいに飛ばされてる。いや、待てよ……?」

 「?」

 「スピード、(アレ)を登れば届きそうじゃないか?」

 「天才」


 戦線復帰したが、前線は案の定死屍累々の様相を呈していた。スタンからの薙ぎ払い攻撃で前線は半壊したようだ。生き残りは果敢に攻撃を仕掛けているが、彼らも長く持たないだろう。

 だが、お陰と言っていいのか、フィールドを広く使える様になった。人数が少なくなった分、声も通るだろう。元より集団戦(レイド)ボスだ、ここは連携するべきだろう。


 「策がある!良ければ協力してくれ!!」

 「臨時で指揮を執っている、【バール】だ。良ければ協力しよう」


 思わぬ方向から声。声の主は鉱人種(ドワーフ)の男だった。敵性生物(ザコ)を処理した後続集団が上がってきたようだ。しかも指揮系統がはっきりしているらしい。

 嬉しい誤算だった。手短に情報を共有する。


 「ボンドだ、よろしく。象の鼻を降ろさせたい。攻撃条件は分からない、ただ、攻撃にスタン効果が乗ってる」

 「怖いな、注意が必要だ」

 「後は……鼻を二回鳴らしたら象牙を射出してくる」

 「ふむ。取り敢えず正面攻撃が賢そうだ」

 「だな、指示は頼む」


 バールの突撃合図を皮切りに、第二陣が象に突っ込んでいく。雑魚との戦闘で集団戦に慣れたのか、その動きは驚く程スムーズだ。俺たちの混ざる隙がない。


 「ねぇ、私も出たいんだけど」


 これは楽でいい、スタン攻撃までここで待ってようと思った所で、これである。冷静に考えると、スピードには戦闘狂のケがあるのかもしれない。モンスターパニックの時笑ってたし、戦闘中のテンションは別人のように高い。

 何とか言い含めていると、バールの疑問の声。


 「彼女は?」

 「……スピード」

 「この作戦の主役だ。彼女が攻撃役になる」


 何故かスピードの声が硬い。微妙な空気を霧散させる為に、補足の言葉を重ねる。

 と、前線で動きがあった。象が鼻を上に振り上げ、今まさに振り下ろさんとしている。


 「ちゃんと決めろよ」

 「誰に言ってんの」

 「来るぞ!」

 「総員散開!!」


 象の鼻を中心に集団が二つに割れる。象と、スピードとが線で結ばれ、間に邪魔するものは無い。走り出したスピードが跳ぶのと、象が鼻を振り下ろすのはほぼ同時。


 「ここ!」


 いや、スピードの方が僅かに早い。跳ぶことでスタン攻撃を回避、着地点は宣言通り鼻の上。走りにくさを微塵も感じさせない動きで登りきり、象の目は、文字通り目と鼻の先。


 「今度こそ!」


 突き刺さる。

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