オープニングイベント-2
本日三話投稿です。(2/3)
読み飛ばしにご注意ください。
声に導かれるように……といっても、相変わらずの一本道だが……進んでいけば、大きな広間のような所に着いた。俺たちが歩いてきた道以外にもいくつかの道があり、合流地点になっていたようだ。
薄暗い部屋の中心には人集りが出来ており、奥までは見通せない。近付くとそれが迷宮人形である事がわかる。
もしかして、ログインしている全プレイヤーが集まっているのか?軽く見積っても万は下らない気がする。
彼らは思い思いのグループを作って談笑しており、一部こちらに目を向けた人には軽く会釈するが、大半は気にもしていないようだった。
「ここがゴールか」
「みたいだね。人がいっぱい」
「人ってか、迷宮人形な」
「ハイハイ。あ!ねえ、奥の壁」
「壁?」
「あ、もしかして、暗くて良く見えない?」
「コイツ……」
煽りやがる。獣人種:猫型には暗視補正とでも言うべきボーナスが付いているらしい。スピードの目には何かが見えているっぽいが、俺にはさっぱりだった。
で、見えている彼女が言うには、
「壁画が描かれている」
らしい。それはどんな、と聞こうとしたタイミングで、何かしらの条件を満たしたのだろうか、突如イベントが始まった。
『解析完了しました!』
男の声。周囲もイベントが始まったことを理解しはじめたのか、一拍遅れて静かになっていく。その間を待たずして、今度は女の声。
『結果は?』
『はい、やはりこの先に、我々が幾千年追い求めてきた聖地、アルカディアへと通じている道があるようです!』
『本当か!?』
女声の側が興奮している事が声の調子でわかった。
恐らく最奥、スピードの言う壁画付近での会話なのだろう。イベント補正が掛かっているのか、声の主は視認できないのに、その声はハッキリと聞こえる。
「アルカディア?」
「ここでタイトル回収か……?いやまだ何も分かってないけど」
というか今、幾千年とか、サラッと重要そうな事言ってなかったか?だが考察は後だ、思考の間もイベントは進行している。
『はい。読み上げます……
【汝、証を掲げよ】
【一つは宝。其は千年王国の繁栄に寄与した宝也】
【一つは力。其は地を砕き海を割る力也】
【一つは書。其は叡智の記されし書物也】
【一つは生命。其は次代を担うものでなく、次代に繋ぐもの也】
【全ての証を掲げし時、以て道は開かれん】
!』
待て待て待て。情報量が多すぎる。抽象的な説明は解釈が難しい。初見じゃ絶対わからないというか、わからせる気がないだろう。
だが何となくわかることもある。
「ここ、絶対エンドマップだろ」
「あー……」
そういう事である。道を開くために証を集めろ、なんて、完全にRPGのお使いクエストのそれだ。
つまり、この先にアルカディアがあって、そこに行く為に頑張るゲーム、ってことなのだろうか。そう考えるとタイトルの意味も通る、ような気がする。
『おい、証とはなんだ!?』
再び女声。苛立ちを伴った問い掛けの返答より先に、それは起こった。
「……ケテ」
「?なんか言ったか、スピード」
「ん?いや、私は何も言ってないけど」
「今声がしたと思ったんだが……」
「助けてくれ!!!」
叫び声が部屋に響く。
声が聞こえた方向、後ろを振り返ると、息も絶え絶えといった様子のプレイヤーが数名、こちらへ走って来る様子が見えた。
その数拍後。追いかけるようにして現れる、明らか敵対しているとわかる異形生物。後から後から無数に現れ、あっという間に広間の半分を埋め尽くさんとしている。
同時に、アナウンスが鳴った。
【敵性生物急襲:発生!】
「ここで初戦闘かよ!?」
物量vs物量。
密集しているからか、単調な攻撃しかして来ない為思ったより回避は簡単だ。だが何より量が多い。人集りの後ろの方にいた俺達は、必然、最前線での先頭を強いられていた。
「アハッ」
「よく笑顔でいられる、な!」
持っていた棒をやたらめったらに振り回す。が、効いている気がしない。スキルのようなゲームシステムの補助がなければ俺なんてただの一般人なのだから、当然と言えば当然なのだが。
その点スピードは上手く立ち回っていた。手に持っているのは俺と同じ木の棒のはずなのに、獣人種のスピードで翻弄し、的確に急所を貫いて倒している。
「というか前変わってくれるか?正直、結構キツい」
「や、イベント中……」
「今それどころじゃ無ぇだろ」
手持ち無沙汰にしてる奴とスイッチ。上がった息を整える。
イベントの続きは確かに気になる。気になるが、今はイベント所では無い。いや、アナウンスが入った事を考えると、これもイベントの内か?なら、進行条件はなんだ?
考えられるのは一定数の撃破、もしくは……
「……違う」
近くで誰かが喋った。見れば、先程追いかけられていたプレイヤーの一人。
「コイツらはおまけだ。俺達が逃げてたのは……」
咆哮。行動阻害が入ったのか、一瞬体が重くなる。あれ程うるさかった戦闘音がピタリと止んだ。
静寂の中、プレイヤーにもイベント補正が入ったのか、その呟きは、はっきりと響いた。
「俺達が逃げてたのは、巨大な象だ」
再度咆哮。
ズシン、という足音を立てて、遂にその巨体が姿を現す。
【巨大敵性生物襲来:発生!】
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