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反省会-1

 「……ん?」


 目を覚ますと草むらの上、何かに背を預けるようにして寝ていた。空の上、雲に隠されている太陽の位置が低くなってきている。

 というか、何故倒れているんだ、俺は。

 確かスピードと一緒に迷宮攻略をしてて、それが昼過ぎ頃。探索は順調で、鼠はもう余裕だねみたいな話をしていて、それから……。


 「!そうだ、って、熊!?」


 思い出した。熊に追われていて、【制限解除(オーバーモード)】を使って逃げようとしたんだ。

 慌てて立ち上がった事で、今まで俺が()()背を預けていたかがわかる。見慣れた()()が、丁度川辺と同じような体勢で寝そべっている!


 「……なんだ、木か」


 逃げようと後退った所で、刃物か何かで()()()()()()ような断面が目に入る。そこから見えるのは骨と肉、ではなく年輪。

 熊だと思っていたものは倒木だった。周囲を軽く見回す。取り敢えず、熊は近付いてきていないようだった。一安心。

 混濁していた意識が次第にはっきりしてきた。

 多分、スキルの反動で気を失っていたんだと思う。近くに落ちていた端末でゲーム内時間を確認すれば、もう15:00近い。迷宮に入ったのが、確か13:00過ぎ辺りだったはずで、熊と戦い始めたのが14:00くらいだと考えると、三十分以上気絶していたのか。

 身体は破損こそしていないものの、何処と無く動きにぎこちなさがある気がする。

 で、見回すついでに、今いる場所を確認したのだが。


 「行き止まりじゃねぇか、ここ」


 〈マップ〉を選択、現在地を確認。スピードと別れてから大分進んだようで、ほぼマップの真下、南西あたりにいるらしい。

 逃げるのに必死で、走ってきた道のことは全く覚えていないのだが、マップ表示を見る限りいくつか分岐があったらしく、もしかしたら、熊は別の道に行ったのかもしれない。


 「どちらにせよ、歩いて帰るのは無理そうか」


 《帰還玉》を取り出そうとして、遅まきながらようやく気付く。

 弓矢が無い。近くを軽く探すが落ちていなかった。スキル発動時には間違いなく手に持っていたはずなので、発動中に落としたのか。

 端末が無くなっていないのは、無くなるとゲームが成り立たなくなるからか。

 一応〈持ち物〉タブを開いてインベントリを確認するが、鼠の素材しか入っていなかった。

 次に【制限解除】を使う時は、使用前に武器をインベントリに入れておく必要があるな。いや、それよりも制御できるようになるのが先か。

 それにしても、二人揃って初日に武器をロストするとはな。苦笑し、改めて《帰還玉》を取り出そうとして、


 「コレ、()()回収できるのか」


 ――目の前の倒木に回収判定が出たことで行動を中断する。

 てっきり、斧か何かである程度切って、木材に加工してから回収するのかと思っていたんだが、インベントリに余裕があればそのまま回収できるようだ。

 システム的に可能なら、回収しない手はない。インベントリに入れた瞬間、重量が跳ね上がり制限ギリギリになったが、動けなくなることは無かった。

 今度こそ《帰還玉》を砕き、開かれたゲートをくぐって、街へと帰還した。


 ゲートが閉じる瞬間、熊の咆哮が聞こえた気がしたのは、きっと気の所為だろう。






 戻ってきた場所は、最初の広場だった。早速スピードに連絡を、と端末をいじり、〈総合〉タブからフレンド欄を開く。


 「結構待たせてるっぽいからな、早めに謝らないと……」

 「おそい」

 「ごめんって、まさか気絶するとは思わんじゃんか?」

 「気絶!?大丈夫なの?」

 「ダイジョブダイジョブ、スキルの反動ってだけで、別に熊にやられた訳じゃ……!?」


 え。

 恐る恐る振り返れば、怒りと呆れと心配とが綯い交ぜになった、複雑な表情を浮かべるスピードが、ってやっぱり怒りが一番強そうですね!?


 「遅いよ、何回私を待たせるの」

 「いや、マジでごめん……なさい」


 心配したんだから……と、小さく呟くスピード。ごめん、聴力補正でバッチリ聞こえてる。

 そうだよな、先に帰ってきて、連絡も取れずにずっと待たされたら心配にもなるよな。それもこれも熊が悪い。熊がしつこく追いかけてくるから、二手に分断されてしまったし、俺は【制限解除】を使うしかならなくなった。

 だからしょうがなかったんだよ……。


 ……ん?

 なにか、忘れているような。


 「って、元はと言えば喧嘩を売ったお前(スピードが原因)が悪いだろ!何俺が謝る流れ作ってんだ!!」

 「やべ」

 「聞こえてるぞ」


 コノヤロウ、俺の聴力補正を解って(わかって)て逆利用したな。何が“心配したんだから”、だ、テメェで引き起こしておいて、よく言う。

 いい機会だ、俺達の行動方針を話し合う必要があるだろう。スピードは、熊に不意打ちをかけたのを無かったことにしたいようだが、それは将来的に良くない。


 「まず、考え無しに突っ込むなよ」

 「ボンドが慎重()()()んだよ!」

 「はあ?せめて――」


 「なにあれ、恋人同士の喧嘩?」

 「リア充不幸になれ」

 「初日は揉めが多いなー」


 だが、広場という人が多くいる空間で、突然口論を始めた俺達はいつの間にか周囲の注目を集めていた。じっくり話し合いたいが、悪目立ちは良くない。一度頭を冷やす為にも、場所を移すことにしよう。


読んで頂きありがとうございます。

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