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レッドベア-2

 「わかった、どっちに逃げる?」

 「来た道はダメだ、最悪MPKを疑われる」


 今度こそ、スピードも撤退に異議は無いようだった。俺の逃げる宣言を肯定してくれる。そうとなれば早速〈マップ〉を開いて、逃走ルートを考えよう。

 じっくり悩みたいところだが、熊の呼吸がだいぶ落ち着いてきている。時間的猶予は残り少ない。


 「このまま川沿いを南側、上流の方へいく。良さそうな横道があればそこに」

 「りょ。私が先行する」


 スピードは俺の指示を聞くなりさっさと先に行ってしまった。

 え、俺が殿(しんがり)なの?

 それとも見捨てられた?






 冗談は置いておいて。

 熊の攻撃の中で一番の脅威が突進だ。現状、俺では予備動作を知覚することが出来ないので、タイミングをスピードに教えて貰う必要がある。

 ただ、“逃げる”という行動の性質上、熊に背を向ける必要があるわけで。二人で同時に逃げてしまうと、熊の様子を見ることが出来なくなってしまう。

 そう言う訳で、足の速いスピードが先行するのは合理的なのである。


 「今!」


 ただ、回避が命懸けなのは変わらない。スピードの合図と同時、全力で横に飛ぶことで突進を回避する。

 どうやらこの熊、獲物との距離が一定以上離れていると突進攻撃をしてくるらしいのだが、目標を定める知能がある。つまり、攻撃を引き付けるためにはギリギリまで同じ位置にいないといけず、必然、スレスレの回避を強いられるのだ。

 ただでさえ俺のEN総量は低いんだ、カスっただけで死ぬ可能性は充分ある。

 唯一、突進攻撃後に硬直時間があるのが救いと言えば救いか。


 「クッソ、キリがないぞこれ……!」

 「待った、道が見えた!」

 「行き止まりじゃないか?」

 「わかんない、けど結構続いてる!」

 「一か八かだ、……曲がるぞ!」


 数回程避けた所で、スピードから嬉しい知らせが届く。どこに繋がっているのか、そもそも先があるのかも分からないという不安はあるが、このまま川沿いをチェイスし続けるよりは良いだろう。

 それに、()()()()()という事は、今まで出来なかったことも出来る。


 「いつまでも逃げっぱなしというのもな……!!」


 突進後の硬直で動けない熊に向かって、弓を引き絞る。的が動かないなら、当てるのは余裕だ。なお、熊戦最初のスカはカウントしないものとする。

 頭を狙った【パワーショット】は、偶然にも左目に命中。視力を奪うことに成功。怒りのボルテージが上がるのを横目に、右に曲がる。

 逃げながら考えていたんだが、確かスピードが象の目を刺した時も左だった気がする。何故だろう、狙った訳じゃないが、奇しくも左目潰しのペアになってしまった。

 ……ダサいな。


 「目を潰した!これで狙いがブレやすくなる、ハズ……?」

 「Digaaaaa!!!」

 「うわぁ……」


 合流すると、後ろを見ていたスピードが心底嫌そうな声を出す。

 恐る恐る振り返れば、怒り心頭を体現しているとわかるほどに毛を逆立たせ、心做しか無事な方の目も吊り上がっているように見える熊の姿があった。しかも、何やら赤い()()()を見に纏っている。

 スピードに奇襲された時より怒ってないか、アレ。今まで遊んできたゲームで考えれば、“怒り”状態になったということで、残りHPは案外少ないのかもしれないが。

 と、身体が引っ張られる。遅れて、焦った声。


 「マズッ!!??」


 速い。まるで赤い稲妻だ。

 スピードに救われて、ようやく突進が来たことを理解した。目の前にはいつの間にか熊がいる。先程までの突進ですらほとんど見えていなかったのに、今の攻撃は全く知覚できなかった。

 間違いなく動きが強化されている。オーラは単なる視覚効果だけじゃないようだった。


 「クールタイムも短くなってる……!」


 硬直から回復するのが明らかに早い。

 動き出した熊を引き付けるためか、スピードが前に出る。突進の回避は困難と判断したのだ。だが今の彼女の手に武器は無い。


 「……【脚力強化(スピードブースト)】!」


 スキル発動、更に速くなったスピードだが、それでようやく速さが対等のようだった。キレの良くなった熊の攻撃を必死に避け始める。

 剣を抜こうとしていた時の焼き直し。ただ、限界は直ぐに来るだろう。流石のスピードも避け切れず、回避に専念していても尚攻撃が掠っているのがわかる。

 急いで矢の残数を確認、残り五本。心許ない数だ。全部当てられたとしても、果たして倒し切れるかどうか。

 どうする、奥の手になるだろうと考えて取ったスキル【制限解除(オーバーモード)】を切るか。だがこのスキルの効果は未知数だ。どうなるのか想像がつかない。

 悩む俺、一方的な死闘を強いられるスピード、荒れ狂う熊。状況を動かしたのは、その誰でもない一匹。


 「Vom」

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